【NHKスペシャル】
「巨龍中国 大気汚染 超大国の苦闘~PM2.5 沈黙を破る人々~」
(NHK総合・2017/2/5放送)
※公式サイト:http://www6.nhk.or.jp/special/
<感想>
中国の天安門広場周辺の映像をみてもPM2.5の影響と思われるスモッグのひどさが分かります。これではマスクを付けていてもちょっと近づきたくなくなるのが正直なところです。
ただこの問題を単純に中国を揶揄したり批判するだけで片付けるのは簡単ですが、根本的な問題の解決にはならないと思いますね。何しろお隣の国ですからPM2.5は飛んできます。他人事では済まないでしょう。
また日本もかつては工場地帯はスモッグで青空もなく喘息に苦しむ人々は大勢いました。川や海は排水で汚れ、中には大変な公害病も引き起こしました。さらに国や行政が被害者を救済するのではなく、逆に企業を庇うような姿勢をとっていた、そんな過去があります。
事実上の一党独裁体制の国を相手になかなか一筋縄ではいかないでしょうけども、お隣の国としてやはり一定克服してきた公害除去のノウハウなどを輸出することはできないものだろうかと思ってしまいます。特に子どもたちが苦しめられている姿を見ると、人道的にも何とかしてあげたいと思わざるをえないですね。
「人間は倹約からぜいたくには簡単に移れるが、ぜいたくから倹約に戻るのは難しい」という言葉は印象的でしたが、経済発展と環境保全は両立できるし、環境を軽視すれば巡り巡って経済も発展しないということを分からせる…しかないのかな。NGOの人たちの地道な活動が実を結ぶことを願うばかりです。
<視聴メモ・番組内容(いわゆるネタバレ)が含まれています>
立ち上がれ 毒の被害を受けた住民たちよ
溢れんばかりの血潮はもう沸騰している
・共産主義をたたえる革命歌の替え歌を叫ぶ男性。工場が排出する煙で呼吸疾患となる住民が相次ぎ、立ち退きを訴えていた。
工場をたたきだそう
これできれいな空気が吸える
・世界の工場として急激な経済成長を成し遂げた中国。その代償として深刻化した大気汚染。今、中国では大気汚染物質PM2.5の影響で年間100万人近くが死亡しているといわれる。
・インターネット上に投稿されるようになった「私たちは沈黙しない」という訴え。環境汚染を巡る民事訴訟は今や年間およそ8万件。国民の不満は頂点に達しつつある。共産党の政権基盤をも揺るがしかねない事態。国は汚染に宣戦布告すると宣言した。
環境汚染は民生の患い、民心の痛み、全力で取り組む(李克強首相)
・更なる経済成長の旗を掲げながら、同時に大規模な汚染対策も迫られる中国。中国14億人の命を脅かす大気汚染を克服できるのか。3年にわたる闘いの記録。
<ゴミ処理会社の煙害に苦しむ住民たち>
・2014年3月、全国人民代表大会で中国の今後を決定づける重大な目標が掲げられた。それまで国の根幹に関わる最重要課題は貧困の解消だった。そこに環境汚染の撲滅が加えられたのだ。
PM2.5対策などを突破口に貧困と闘うのと同様に、環境汚染との闘いも全力で行う(李克強首相)
・中国全土を覆うPM2.5の濃いスモッグ。国民の不満の高まりに国は対策の強化を打ち出さざるをえなくなっていた。中国中部の中心都市、人口1000万の武漢。この街の住民たちが沈黙を破る口火を切った。
・2014年3月、中国最大手のゴミ処理会社の操業停止を求める住民たちが24時間体制で監視を続けていた。ゴミを搬入するトラックを阻止しようとする住民たち。
ゴミ処理会社、出て行け(叫ぶ住民たち)
・しかし地元政府の治安当局は住民たちの排除に乗り出していた。住民が地元政府に連行される事態が続いていた。中国でここ十数年、急速に進む都市化政策。市の中心部に程近い住宅街に分譲マンションが出来たのは2005年のことだった。
・市の人口が急増する中、ゴミの量も増えた。2008年に一般ゴミの処理会社、2012年に医療廃棄物の処理会社が相次いで進出した。経営するのは、いずれも中国有数の巨大企業。ゴミ処理は成長著しいビジネスだという。
・マンションに暮らすのは700世帯、会社員や自営業など経済成長を享受してきた人たちだ。しかし煙と強烈な異臭に苦しめられるようになった。
・王さん一家はこの1年前、一人息子の成さんを亡くしていた。24歳のときに突然、急性白血病を発症。3か月後、亡くなった。医者からはゴミ処理会社の煙に発がん性物質が含まれていたのではないかと告げられた。
永遠の眠りにつく我が子よ。生きたいというお前の願いはどうしてかなわなかったのか。なぜ私たちよりも先に逝ってしまったのか(父親)
・2つのゴミ処理会社が操業を始めてから、白血病やがんで亡くなったマンションの住民は20人以上。呼吸疾患に苦しむ住民は700人に上っていた。しかし会社は、煙と住民の健康被害の因果関係は認めていなかった。
・中国全土でも環境汚染への抗議行動が起こるようになっていた。その困難な闘いを担っていたのは、小さな子どもを持つ母親たちだった。
首を絞められて頭を殴られた(女性)
・住民代表の一人、任瑞さん(34)。5歳になる一人息子が病に苦しんでいた。任さんは30万元(約450万円)で購入した3LDKのマンションで夫と子ども、母親と4人で暮らしている。
・一人息子の嘉宸くん(5)は3歳のとき、咳を繰り返すようになった。気管に2つの大きな腫瘍が出来ていた。医者から大気汚染が関係しているのではないかと告げられた。中国全土でも嘉宸くんのように気管に重い病気を抱える子どもが増えていた。
闘いの目的は全てのお母さんのためです。子どものために母親なら誰でも立ち上がると思います。子どもが咳をすると耐えられません。こんな目にあって家庭はむちゃくちゃです。色々と不妊治療をして、ようやく授かった子なんです(任瑞さん)
・会社の操業停止や立ち退きの権限は地元政府が持っている。この日、地元政府は任さんたちが半年以上求めてきた話し合いの席に初めて着いた。
他の場所に移転させると言いながら、もう2年も経っているではないか(住民)
武漢市では毎日60トンの医療ゴミが出ている。それをどうすればいいのか?(地元政府担当者)
(健康被害は)ゴミ焼却が原因ではないという証拠を出してほしい。あなたは責任逃れをしているのでは(住民)
責任逃れをしているわけではない(地元政府担当者)
・武漢では経済成長による消費の拡大で、処理しなければならないゴミが急増していた。担当者は上司に報告するという言葉を繰り返すだけだった。
・中国政府の汚染への宣戦布告。しかし経済を優先する地元政府は、その方針を徹底することができずにいた。
・任さんとともに活動の代表を務める張細コウさん(38)(※コウは「女」に「交」)。地元の警察に5日間拘留され、体調を崩していた。拘留の理由は張さんが、ゴミ処理会社の塀に李克強首相が語った言葉を掲げたことだった。
李克強:貧困と闘うのと同様に環境汚染との闘いも全力で行う
・武漢ではこの頃、他のゴミ処理場でも抗議活動が起きていた。治安当局から「社会秩序を乱す」と告げられた。
(腕の痣を見せながら)今の地方政府は腐敗しています。諦めることはできません。このままだと企業に違法行為を続けさせることになります。こんなことでは子どもたちに何も教えることができません(張さん)
・2014年4月、任さんたちマンションの住民がゴミ処理会社の前で抗議を始めてから1か月。この日、住民たちはがんや白血病で亡くなった人の追悼式を開いた。企業や地元政府に圧力をかけるためだった。
<国への陳情を妨害する地元政府>
・国は排出してはいけない危険物リストを厳格に定めている。そして地元政府と企業は、その徹底と市民への情報公開を求められている。
・任さんたちはゴミ処理会社の排出データを公表するよう地元政府に訴えてきた。しかし、社会の安定を揺るがすという理由でその情報は公開されることはなかった。
・地元政府との交渉に限界を感じた任さんたちは国に直接、窮状を訴えることにした。しかし路上で男に呼び止められた。北京から1200km離れた地元・武漢の役人だった。
皆さんが北京に来ても、ここは問題を解決する場所ではない。帰って何とか問題を解決する方法を考えますから(役人)
誰も対処しません(任さん)
そんなことはありません。地元政府を信じないのですか(役人)
あなたたちは中国共産党が指揮する政府なのか知りたいのです(任さん)
李克強首相の標語を掲げただけで私は拘留されました。掲げた場所が悪いというのなら、どこに掲げればいいのですか(張さん)
李克強首相の標語を掲げてはならないと、あなた方が言ったのです。新聞でしか使ってはいけない標語なのですか(任さん)
日常生活で首相の標語を使えないのは大変なことです(張さん)
そういう言い方は良くないです(役人)
私は断固として陳情を行います(張さん)
では自ら責任を取りなさい(役人)
主婦がここまでやるのは、あなた方に追い詰められたからです。農村出身の私たちがここまでやるのは、本当に追い詰められたからです(張さん)
・地元政府にとって住民が国に陳情することは、自分たちの評価に関わる重大事だった。しかし任さんたちは地元政府の忠告を受け入れることはなかった。
後ろの2人を撮って。あの2人ずっと尾行してくる(任さんたち)
<国の窓口も対応しなかった>
・国の環境政策を取り仕切る環境保護省。中国政府は地方の住民たちの不満を解消するために陳情を受ける窓口を設けている。
長い間、違法操業を続けています。何回も地元政府と交渉しています。でも解決方法がなく、病気になる人が後を絶たないのです(任さん)
・しかし陳情の数が急増し、窓口は殆ど機能していない。任さんたちの訴えも聞き入れられることはなかった。
地方の問題は私たちの管轄ではない(担当者)
地方の環境保護局は問題を放置するだけでなく企業をかばう(任さん)
地方政府に報告すればいい(担当者)
・環境汚染を訴える陳情や投書は年間100万件近くに上っていた。
<APEC開催のため北京を「青空」にしたが…>
・中国政府が大気汚染に宣戦布告してから8か月。北京の空は晴れ上がっていた。APECアジア太平洋経済協力会議開催のため、周辺の工場数千社に一時操業停止命令などを下していた。
今の北京は青空、APECブルーだ。会議が終われば消えるといわれるが、絶えず努力すればこのブルーは保てると信じている(習近平国家主席)
・しかしAPECの閉幕から1週間後、北京は再びPM2.5の濃いスモッグに覆われた。インターネット上では大気汚染を嘆く歌が流れていた。
<汚染対策の強化を迫られる鉄鋼産業>
・2015年1月、中国政府は更なる汚染対策の強化を打ち出した。環境保護法を25年ぶりに改正、違法企業に対し罰金の上限を撤廃した。
・この頃、汚染対策が進まない大きな要因となっていたのが、経済成長を牽引してきた鉄鋼産業の排出だった。国内に1万社以上ある鉄鋼関連企業。その多くが集まる河北省、北京の大気汚染の元凶とされている地域だ。
・鉄鋼メーカーは利益を追求しながら、同時にコストの負担が大きい汚染対策も迫られていた。国内最大手の首都鉄鋼もその一つ。国が定める環境基準を満たすため、新たに導入したコントロールルーム。これまで環境対策に80億元(約1200億円)を投じたという。
私たちには大きなプレッシャーがかかっている。環境対策には多大な資金が必要だ。他の部分で削減しても環境対策コストは下げることができない。給料を減らしてリストラするぐらいしか方法がない。もう後へは戻れないのだ。だから大変なんだ(首都鉄鋼担当者)
<世論を喚起するNGO、対策に追われる企業>
・汚染対策を急ぎたい中国政府。市民の環境問題への意識の高まりとともに活動するようになったNGOも容認している。最も積極的に活動しているNGO自然大学。国内の賛同者などから資金を得るとともに、国の協力も受け活動している。
・NGOは世論を喚起するために、SNSに企業が排出する汚染の実態を投稿し続けている。この日、河北省のある鉄鋼メーカーについて投稿した直後、電話がかかってきた。
あれを削除するようお願いできないか(企業関係者)
SNSの投稿を削除するということですか(自然大学担当者)
そうだ(企業関係者)
なぜ削除しなければならないか、正当な理由を教えてください(自然大学関係者)
・NGOは鉄鋼メーカーと交渉し、その情報を市民に伝える役割も担っている。
私たちにも問題はありますが、指摘されたらすぐ改善します。積極的に取り組みます(企業の環境対策責任者)
・今、企業は汚染を巡る市民の厳しい目を無視できなくなっている。SNSで情報が拡散すると汚染企業のレッテルを貼られ、銀行の融資が受けにくくなるという。
問題を隠すわけではありません。私には部下が大勢います。上司に問題が発覚したら、みんなの評価に影響するのです。これは会社にとって大きな問題なのです。だから誠心誠意をもって皆様にお願いします。問題を小さくしてください(同上)
・大気汚染を巡って高まる国民の不満。経済成長と汚染対策をどう両立させていくのか。中国は難しい舵取りを迫られていた。
<環境対策が軽視されている現実>
・武漢でゴミ処理会社の操業停止を訴えてきた任さん。この日、環境に関するシンポジウムに招かれていた。この頃、ゴミ処理会社による汚染への激しい抗議活動は中国全土で40近くに上っていた。任さんたちの活動はそのシンボルとして注目を集めるようになっていた。
環境保護法が改正されましたが、以前も厳しい規制があったにも関わらず、なぜ誰も有効な処罰を下せないのですか。私たちは理解できません(任さん)
・シンポジウムには、国の環境保護省直下で汚染対策に当たってきた元幹部も参加していた。
汚染に苦しんでいる人たちに本当のことを教えるべきだとずっと悩んでいました。だからもうこの問題を隠しません(元幹部)
・元幹部は中国政府が厳格に適用するとしている環境影響評価について言及した。環境影響評価とは企業が工場を操業する際、地元政府の認可を受けるために提出するものだ。工場が周辺の環境にどれくらい影響するのか、企業が評価機関に依頼して調査を行う。
今の「環境影響評価」は無秩序です。安易に合格させます。ゴミ焼却の問題だけ考えても全てのゴミ処理会社の報告書を調べてください。ほとんどがウソです。環境影響評価を良くするために、企業は多額の金を払います。評価機関は厳しいことが言えず基準が緩み、企業は認可がもらえるのです(同上)
・任さんたちは、改めて環境対策が軽視される現実を突きつけられた。
<裁判での闘いを模索する住民たち>
・任さんたちは新たな戦略に乗り出した。健康被害に苦しむ人たちを原告とし、地元政府と会社を裁判に訴えることにした。しかし何度訴えても裁判所に受理すらされなかった。
・その一方で地元政府はゴミ処理会社に最も近いマンション3棟を買い取り、住民運動の広がりを抑えようとした。しかし立ち退きなどの抜本的な対策を打ち出すことはなかった。
・住民代表の任さんの生活は一変した。入退院を繰り返す息子のために、会社勤めだった夫が休みの都合がつきやすいと飲食店を始めた。任さんはゴミ処理会社から離れた店で、夜遅くまで息子とともに過ごす。任さんたち住民は、一向に改善されない状況に疲れ果てていた。
・2015年4月、会社を訴える裁判を模索する任さんたちのもとに新たなニュースがもたらされた。司法制度改革に乗り出した中国政府が、裁判所に全ての訴えを受理するよう求めたのだ。
・任さんたちのように環境汚染を訴える市民が急増。国も対応を迫られていた。汚染と闘う全国の人々はSNSで繋がるようになっていた。
・仲間たちの先頭に立ちたいと任さんたちはこの日、ある行動をとった。それまでは会社に対し操業停止と70万元(約1300万円)の賠償金を求めようと考えていた。しかしこの日、任さんたちは賠償金の金額を7元(約130円)に変えた。
何としてでも立件させるためです(任さん)
(7元では問題解決にならないのでは)
私たちの怒りを表に出すためです。お金のためではない(同上)
・任さんたちの訴えは1年間、受理すらされてこなかった。
財産損失を求めるなら根拠となる書類を提出してください(裁判所職員)
はっきり書いてますよ(任さんたち)
損失の原因は…環境汚染としか書いていませんよ(裁判所職員)
しっかり損害根拠を読みなさいよ。環境汚染で賃貸にも出せない、家も売れない(任さんたち)
それでは7元の明細を出しなさい(裁判所職員)
7元の明細?どうしようもないからこうしたんだよ(任さんたち)
・この日、任さんたちの訴えが初めて受理された。子どもたちのために苦しい闘いに身を投じた母親たち。訴えが受理されたという知らせを聞いた全国の仲間から、自分たちも後に続くという声が次々と寄せられていた。
2015年4月17日は記念すべき日です。武漢市のゴミ焼却汚染民事賠償は1年かけて多くの困難を乗り越えて、やっと受理されました。国と最高裁判所の制度改革に感謝します。これからの審理と最後の解決まで困難があると見込んでいますが、第一歩を踏み出してよかったです。
・裁判所が初めて受理した訴え。しかしその後、住民たちが環境影響評価を行った機関も被告に加えようとしたところ裁判所が拒否。結局、審議されることはなかった。
<生産過剰で操業停止になっても環境汚染だけが残る>
・中国政府の汚染への宣戦布告から1年。企業の操業停止を実行する地方政府も出始めていた。しかし河北省の汚染は改善されていなかった。鉄鋼産業は利益の追求と環境対策の両立に苦しんでいた。
・鉄鋼メーカーを調査してきたNGO自然大学。この日、河北省で意外な光景を目にした。河北省秦皇島市、濃いスモッグに覆われていたこの村に青空が広がっていた。大気汚染の原因となっていた工場が2か月間、生産停止していた。景気が減速し、資金繰りが厳しくなったという。
・NGOのメンバーが村を訪ねると皆、不満を訴えかけてきた。この1年近く前から労働者3000人に給料が支払われず、生活が限界に達しているという。思わぬ理由で汚染対策が進んだ村。NGOのメンバーが住民たちの窮状を見かね、地元政府の幹部に改善を訴えた。
河北省は給料の遅配状況を公表すべきなのでは?(NGOメンバー)
いいえ、しません。このデータは社会に悪い影響を与えますから。給料の遅配率が高ければ高いほど社会に影響しますから。公表するわけがないでしょう(地元政府)
・村の人たちは豊かさを手に入れるために。大気汚染被害にはあえて目をつむり懸命に働いてきたという。
昔は畑が元気だったんだ(鉄鋼メーカー労働者)
・この村に鉄鋼メーカーが進出してきたのは2007年、北京オリンピックの1年前だった。オリンピック直後に起きたリーマンショック。苦境に陥った先進各国を尻目に中国が打ち出したのが、4兆元(約57兆円)に上る巨額な景気対策だった。
・不動産ブームが起き、河北省の鉄鋼メーカーも設備を増強。鉄の生産量が急増していく中で、大気汚染はより深刻になっていった。
・しかし不動産の開発ブームも終わり、鉄は生産過剰になった。工場が生産停止したことで再び広がった青空。村の人は汚染された大地だけが残ったという。
これまでは全ての工場が稼動していたので空は灰色でした。青空は全く見えませんでした(鉄鋼メーカー労働者)
(生産すると大気汚染を引き起こし、生産を止めたら労働者たちの生活に影響が出る?)
そうです。人間は倹約からぜいたくには簡単に移れますが、ぜいたくから倹約に戻るのは難しいです。豊かな暮らしに慣れてしまうからです(同上)
経済発展は生活をある程度向上させますが、環境を犠牲にして経済発展を追求してもこの村のように思ったほど発展できず、環境も汚染されます。政府のこれまでの経済政策は無責任です。結局、被害を受けるのは環境とそこに暮らす人々です(自然大学の田静さん)
<中国政府は産業構造の転換を打ち出したが…>
・大気汚染への宣戦布告から2年が経過した去年3月。環境汚染と鉄鋼などの生産過剰問題を同時に解消する。中国政府が打ち出したのが産業構造の大転換だった。
鉄鋼などの経営困難な業種の解消に取り組み、生産能力については古いものを断固廃棄し、過剰なものは順次解消する(李克強首相)
・その一方、経済成長を持続させ2020年までにGDP(国内総生産)を倍増させるという目標を堅持した。しかしある地方政府の幹部は、産業構造は簡単には変えることはできず、環境対策も二の次であるという本音を語った。
中国経済は一隻の船のようなもので、その船は動き出すと止められない。船を止めるには大きな代償が伴う。人は生活の中で飯を食うか部屋をきれいにするかといったら、まずは飯を食う。これが現実だ(地方政府の幹部)
<今なお環境対策はおざなりの現状>
・環境NGOのメンバーたちは、汚染を克服するために気の遠くなるような地道な調査を続けている。この日の調査の途中…。
爆発だ…工場が燃えてる(NGOメンバー)
また爆発だよ、1か月前も爆発があった。
・農薬メーカーの工場が爆発。安さを武器に欧米の企業からの委託を受けて生産を拡大させていた。危険な物質が住宅街に撒き散らされた。
・工業団地には企業の納税ランキングが掲げられていた。環境対策はおざなりにされてきた。
<子どもたちの未来のために闘い続ける母親たち>
・住民が健康被害を訴える武漢のゴミ処理会社は今も操業を続けている。母親たちの先頭に立ってきた任さん。一人息子が発作を起こさないよう店にベッドを持ち込み、暮らすようになっていた。
こことマンションどちらが住みやすい?(任さん)
ここ(嘉宸くん)
どうして?(任さん)
煙がないから(嘉宸くん)
・母親たちが子どもたちのために立ち上がって3年。何度退けられても訴訟を起こし続けている。子どもたちの未来のために、終わりのない闘いが続く。
・世界経済の命運をも握りながら豊かさを求め、果てなき膨張を続ける巨龍・中国。命を脅かす大気汚染に沈黙を破り、声を上げた人々。この冬、北京の空はまたいつものようにPM2.5の濃いスモッグに覆われている。
(2017/2/8視聴・2017/2/8記)
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“あの子”を訪ねて ~長崎・山里小 被爆児童の70年~
特攻~なぜ拡大したのか~
憎しみはこうして激化した~戦争とプロパガンダ~
きのこ雲の下で何が起きていたのか