【NHKスペシャル】
「“トランプ大統領”の衝撃」(NHK総合・2016/11/12放送)
※公式サイト:
http://www6.nhk.or.jp/special/<感想> アメリカ大統領選挙の結果を受けて急遽、放送が組まれたNHKスペシャル。NHKもヒラリー・クリントンの勝利を信じて疑わなかったようです。識者を呼んで「どうなる?どうなる?」と、しきりに心配気味といった内容でした。
私も選挙直前の番組(→
【NHKスペシャル】揺らぐアメリカはどこへ~混迷の大統領選挙~)で書いたように、クリントン勝利だろうなと予想していたので…予想外の展開というか、アメリカ国民の皆さんが随分と思い切ったことをしたなというか、そんな感じです。
そして反トランプの集会やデモが行われるなどアメリカ国内でも揉めているようで、このまま来年の大統領就任後どうなるのかという波乱含みの感じですが、ただ「油断できない」という前提条件付きではあるものの、彼の4年間はそう怖がるような結果にならないような気がします。
というのも、彼自身は大統領になることが言わば目的だったのではないでしょうか。そうなるとぶち上げたものの多くは実現不可能ということで覆すというか、議会での融和を図るという形で収束させるのでは。TPPもちゃぶ台返しするようなことを言っていますが、政策ブレーンたちが同意するとは思えないですね。
また安全保障政策も在日米軍の費用負担増を求めてくるものの、実際に撤退などしないでしょう。経済政策でも安全保障でも日本がどう対応するのか。まだ正式に大統領に就任していないにも関わらず安倍がすっ飛んで会いに行くようですが、相手はビジネスの場で数多くの交渉をまとめてきたしたたか者ですからね。変な約束を取り付けないか、そっちの方が心配です。
それでもトランプに警戒しなければならないのは、やはりヨーロッパの極右勢力との連携でしょう。ただかつてのヒトラーやナチスのような動きになるとは思えないし、仮に大統領が「ご乱心」のときは退場させられる可能性も無きにしもあらずかな(アメリカにはごくたまに「魔法」で大統領が消えてしまうことがありましたからね、くわばらくわばら)。
<視聴メモ・番組内容(いわゆるネタバレ)が含まれています>※見出しは当方で付けました。
・世界を揺るがしたアメリカ大統領選挙から3日。トランプ次期大統領への抗議デモは一部が暴徒化し、分断が収束する兆しは見えていない。
・一方、トランプ氏は異例の早さでオバマ大統領と会談、過激な発言を繰り返した姿を一変させていた。しかし記者団に優先する政策を問われると…。
国境での強力な移民対策を検討する(トランプ氏)・トランプ氏が一貫して訴えてきたのは、自国の利益を再優先するアメリカ第一主義だった。まずは自国を優先してほしいという内向きの「チェンジ」の声が、トランプ氏を勝利に導いた。
・アメリカと対立してきたロシアはトランプ氏の勝利を歓迎。ヨーロッパでは排外主義を掲げる政党が拡大の勢いを見せている。
・アメリカが主導してきた世界が大きく変貌する中、私たちはどう向き合っていくべきなのか。
<国民が求めた“米国第一主義”>「アメリカファースト」。アメリカにとって大事なのは他の国のことではなくて、第一にアメリカ自身の利益なのだというトランプ次期大統領の主張です。これまで負担を背負い、時に犠牲を払ってでも世界のリーダーであり続けることに大きな価値を置いてきたアメリカ。そのアメリカはトランプ氏を大統領に選んだことによって今、進路を内向きの方向へと大きく転換しようとしています。アメリカという世界のおもしが失われるのではないかという予感に、国際社会はトランプ氏が打つ次の一手を息をのんで見守っています。そして、何よりアメリカ国民自身が分断され、今度の選挙結果を受け入れきれずにいます。トランプ氏を次期大統領にまで押し上げた原動力、つまり現状に不満を強める怒りのマグマの大きさを既存の大手メディアの多くがその予測を見誤りました(大越健介キャスター)<予想を超えた“チェンジ”求める声>・開票の当日、テレビの選挙速報番組では開票から1時間が経ってもクリントン氏が圧倒的に有利だと伝え続けていた。ところが開票から5時間後、正反対の予測に差し替えるという異例の事態となった。
・番組でコメンテーターを務めたABCテレビのクッキー・ロバーツ記者。エミー賞などを受賞してきたベテランジャーナリストだが、50年に及ぶ記者生活でも経験したことのない事態だったという
まさか有権者がトランプ氏という賭けを選ぶほどチェンジを求めていたとは思っていませんでした。もっと有権者の声に耳を傾けるべきでした(ロバーツ氏)・なぜチェンジを求める声を掴めなかったのか。その理由の一つは、トランプ氏が既存のメディアだけではなく直接支持者に訴えたことだったという。その手段がツイッターだった。
・トランプ氏は過激な発言を繰り返し支持者に訴えた。それを受け取った支持者が差別的な発言などを次々と掲載。人々の不満や怒りがインターネット上で煽られ、支持が集まっていった。
・既存のメディアはそれを取り上げ、さらに拡散させた。しかし過激な発言は限られた人のもので、それほど多くには浸透していないとみていたという。
なぜあれほど人々がツイッター上で汚い言葉を使って憎しみを吐き出すのか、私たちには理解できていませんでした。しかしトランプ氏はネットを通じてそれを引き出すやり方を知っていました。これほどツイッターが影響した選挙は初めてでした(同上)・ツイッターを通じて直接有権者に発信し続けたトランプ氏。既存のメディアは既得権益側であり信用できないと繰り返し攻撃した。
とても不誠実で腐敗したメディアが有権者を毒している(討論会でのトランプ氏)・トランプ氏の言葉に反応した支持者たちは、メディアを敵視するようになった。
(メディアは)真実を報道しろ。真実を報道しろ(トランプ支持者)・既存のメディアと有権者の溝が広がる中、世論調査に本音を明かさなかった有権者も少なくなかったとみられている。
トランプ氏に投票することを隠した有権者がいたため、世論調査が間違ってしまったのではないかとみています。「隠れトランプ支持者」の票が多くあった。それが現実だったのです(ロバーツ氏)・チェンジを求めるトランプ支持者の広がりを把握できなかった既存のメディア。選挙で初めて気づいた世論の大きさに動揺を隠せないでいる。
言葉になりません。オバマ大統領が選ばれたときは、この国にとって輝かしい瞬間でした。でも、あと2か月でその全てが消えてなくなってしまう。1人のアメリカ人としておびえています(ワシントン・ポスト紙のジョナサン・ケープハート氏)<選挙結果をどうみるか ゲストに聞く>大越氏:大手メディアも衝撃を受けています。このアメリカという超大国が変質をしていくとすれば世界のパワーバランスが変わる。そして、経済の姿も変わっていく可能性があります。当然、私たち日本も様々な可能性、場合によっては様々なリスクと向き合っていく必要があります。
・東京大学大学院教授のロバート・キャンベル氏(日本文学が専門。ニューヨーク生まれ)。
大越氏:開票日当日、東京のアメリカ大使館でケネディー大使とともに開票の行方を見守れられたというふうに伺っていますが、そのときの空気そして大勢が判明しつつあるときのご自身の印象はどうでしたか?
キャンベル氏:大使の思いでアメリカ民主主義の一番の見せ場である選挙の行方を、東京にいる各国の大使であるとか日本のリーダーたちであったり、私のような者を招いて彼女が暮らしている公邸でみんなで見ようということをやったんですけども。朝の10時半ぐらいから民主党確実といわれていた州が次から次へとひっくり返っていくにしたがって、何とも言えない張り詰めたような空気が充満していたんですね。私は政策うんぬん以前に、クリントン氏が負けたことで初の女性大統領を見る機会を失ったっていうことと、トランプ氏が勝ったことで暴力であるとか、差別を正当化させるアメリカ社会の一番暗い部分がぐっと壮大かさせるんじゃないかな。先ほど言葉がありましたけど、おびえを感じたということが正直感じました。
大越氏:そういう姿にショックでしたか?
キャンベル氏:大変の大きな驚愕を覚えたんですね。
・外交評論家の岡本行夫氏(元外交官。日米の外交・安全保障政策に精通)。
大越氏:岡本さんはこの結果がありえると予測していましたか?
岡本氏:予測してませんでした。いくつか理由があります。一つは今、完全に開票が終わっていませんけども総得票でいくとクリントンさんの方がトランプさんを上回っているんですね。しかしトランプさんが結局、選挙人が多い大事な接戦州を全部制していった。フロリダ、ペンシルベニア、オハイオ、ウィスコンシン。それぐらいトランプ陣営の選挙戦略がうまかったというのを見誤っていました。それから、より基本的なアメリカの怒りのマグマというものを過小評価していました。今度、出口調査を見ますと共和党の人は90%がトランプ候補に。民主党は90%同じくクリントン候補に。ところが中間層、無党派層がたくさん投票所に行ったんです。おそらく今までにないほどの人が前回に比べると1000万人近く投票所に足を運んでいる。その過半数がトランプ候補に入れたということですね。
大越氏:やはり大手メディアもその怒りまでは読みきれなかったということかもしれませんね。
岡本氏:もう一つ、女性票ですね。白人の女性票53%があれだけトランプ候補が女性を貶めるような発言をしたにも関わらず投票しているんですね。そこのところもメディアももちろん、私も読みきれていませんでした。これがどうしてかというと、やっぱりアメリカ戦争が長く続いて、奥さん方あるいはシニアな女性たちがどこかに…親類のどこかに、自分の友人にみんな軍務に就いている人を持っているんですね。そうすると、その人たちのことを考えてくれるのはクリントンよりもトランプだというふうになっちゃったんですね。
大越氏:そういった有権者の心理も含めて、これからさらに議論を深めていきたいと思います。アメリカ・ファースト、アメリカ第一主義を支持した人たちは、グローバル化の中で置き去りにされた労働者たち。今もお話にありました。そして世界の警察官であることに疲れを感じ、不信を抱く。退役軍人の人たちと様々な人たちに及んでいきました。しかし、そうした人たちに寄り添おうとするあまり、アメリカが内向きになっていけば世界の力の空白というものが広がって、その分リスクが多くなることは避けられません。
<“アメリカ第一主義”内向きになる超大国>・アメリカの利益を最優先にするアメリカ第一主義を掲げたトランプ氏の勝利。直後の演説でトランプ氏が特別に感謝を伝えた人たちがいた。
国に尽くした退役軍人のみなさんと知り合えて本当に良かった。その恩に報いていく(演説するトランプ氏)・全米で2000万人を数え、政治に一定の影響力を持つ退役軍人。国のために戦ってきた功績を讃えるパレードが昨日行われた。元海軍のジョシュア・マシアスさんは、アメリカ第一主義に心を動かされトランプ氏に投票した。
今日はトランプ勝利の記念日です。新しい時代の幕開けです(マシアス氏)・トランプ氏のアメリカ第一主義が支持された理由の一つが、15年に及ぶテロとの戦いだ。2001年の同時多発テロ以降、アフガニスタンやイラクで戦闘を続けてきたアメリカ。最大で20万人近くの部隊を派遣し、合計177兆円の戦費を投じてきたとされている。死者は7000人近くに達した。
・自らも中東に派遣された経験のあるマシアス氏。自由と民主主義のために戦い多くの戦友を亡くしたにも関わらず、情勢がさらに悪化していることに無力感を抱えている。
街を攻撃中に死んだ仲間もいます。丘を制圧しようとして死んだ仲間もいます。自由を守るために戦ったのに、今や全てが無駄になってしまいました。仲間の命が何のために失われたのかと思うと、本当につらいです(同上)・テロとの戦いで疲弊するアメリカ。トランプ氏はアメリカの利益にならないなら軍を派遣すべきではないと主張してきた。
全ての同盟国を助けたいのはやまやまだが、それで何兆円も失っている。我々はもはや世界の警察にはなれない。金を出さない国は守れない(演説するトランプ氏)・退役軍人たちは世界の警察官であるよりも、まず国内を立て直すべきだというトランプ氏の主張に次々と賛同した。
溺れていたら人を助けられない。まず自分を引き上げなければ(男性)まずアメリカ自身が立ち直ることだ。それが“アメリカ第一主義”の意味だ(別の男性)トランプが大統領になれば大きく変わるでしょう。この国を建て直す道を彼は分かっています(マシアス氏)・高まっていくアメリカ第一主義を求める声。
貿易協定は全て見直す(演説するトランプ氏)・経済政策でもアメリカを優先し、グローバル化に歯止めをかけるという主張が予想以上に支持を集めた。アメリカの製造業を支えてきた中西部オハイオ州。接戦とみられていたが、40万票以上の大差がついた。
・製鉄所で40年以上働いてきたリック・パップ氏。勤めていた製鉄所は、経済のグローバル化で安い中国産などの鉄鋼に押され4年前に閉鎖された。
どうして会社はなくなってしまったんだ。私には分からないがひどいものだ(パップ氏)・妻とは離婚。3人の娘は皆、仕事がないからと町を離れた。アメリカを豊かにするはずだったグローバル化に疑問を抱いたパップさん、アメリカを最優先すると訴えたトランプ氏に投票した。選挙の後、トランプ支持を表明していなかった友人まで次々と票を投じていたことを知った。
今日昼食のときに大統領選挙の話題になっって、みんな「トランプに入れた」と言っていた。11人いたけれど、なんと10人がトランプに投票していたんだ(同上)・経済でも外交でもアメリカの利益を最優先してほしいという声を受け止め勝利したトランプ氏。
ともに働き、国を再建しよう。常にアメリカの利益が第一。それから周りの国とうまくやっていく(演説するトランプ氏)・しかし今、選挙で勝利したトランプ氏に抗議するデモが全米で発生、アメリカ社会は分断を深めている。この国の行方に不安を感じるパップさん。それでもトランプ氏がアメリカを変えてくれることにかけるしかないと考えている。
デモが起き、アメリカを去ろうとする人もいる。人々は正しいことをしたのか疑い始めている。正直、胸が苦しくなるくらい先行きが不安なんだ(パップ氏)<“アメリカ第一主義”世界はどうなる>・トランプ氏が掲げるアメリカ第一主義によって、世界はどこへ向かうのか。国際政治学者のイアン・ブレマー氏は、トランプ大統領の誕生は国際秩序を一変させる歴史的な転換点だと指摘する。
“アメリカによる平和”は2016年で終わりました。アメリカは、もはや世界をリードしません。トランプ氏は“アメリカ第一主義”ですから、世界にリーダーシップを取る国はなくなります。アメリカの価値観も広めないでしょう。外交関係は利益しだいで結ばれるのです(ブレマー氏)・ブレマー氏はアメリカ第一主義で最も利益を得るとしているのが、ロシアのプーチン大統領。国際社会の批判にも関わらず、ウクライナからクリミアを併合したロシア。トランプ氏はロシアとも共通の利益を見い出すべきだとしており、プーチン大統領は歓迎の意向を表明している。
ロシアはアメリカとの完全な関係修復を望んでいるし、その用意はある(演説するプーチン氏)・さらにブレマー氏は、今後各国のアメリカ離れの動きも加速するとみている。フィリピンのドゥテルテ大統領のように、中国とアメリカを天秤にかける国々が増えるというのだ。
ドゥテルテ大統領は「アメリカから離れる。中国の方がよい取り引きができた」と発言しました。トランプ氏が政権についたら、ドゥテルテ大統領のような指導者がアジアだけでなく、中東・ヨーロッパなど世界中に現れるでしょう。トランプ氏にとっては、相手がロシアでも中国でも日本でも得をすればよいのです。「うまく取り引きをして得をする」それが“アメリカ第一主義”の正体だと思います(ブレマー氏)<現地からのリポートとゲストに聞く>大越氏:アメリカの人々のうっ屈した感情が世界情勢まで変えようとしているのかもしれません。それでは現在の最新情勢を見ていきたいと思います。ワシントン支局の田中正良支局長です。アメリカの大統領選挙、いつも国を二分する戦いになりますけども、戦いが済めばノーサイドというのはこれまでそうだったと思うんです。しかし今回はこの分断の根深さ、今までにない何か不気味なものを感じるんですが。いかがでしょうか?
田中氏:選挙の翌日から選ばれたばかりの次期大統領に対する抗議のデモが連日続くという異例の事態となっています。抗議のデモはこの週末も行われまして、分かっているだけで少なくとも全米50か所に広がっているんです。参加者の多くが若者で、差別的で女性を蔑むような発言を繰り返してきたトランプ氏は大統領に相応しくないと抗議しているんです。この動き、今後も続きそうです。激震は教育の現場にも広がっています。選挙戦の過程で見られました、人を攻撃し傷つける言動はよくないと教えてきたトランプ氏が大統領に選ばれてしまったことを子どもにどう説明すればいいのか、相談に駆け込む親が相次いでいます。またインターネット上には、選挙をきっかけに人種や宗教への差別をむき出しにした発言が著しく増えているという指摘もあり、トランプ氏が選ばれたことでアメリカ社会の分断は一層鮮明になっているという印象です。
大越氏:これだけ怒りが鬱積をして、こうした事態になっているというのは今までのアメリカの政治がそうした不満とか痛みというものを放置してきた、距離ができてしまったということがあるのではと感じたのですが、いかがですか?
キャンベル氏:日本の識者の中にオバマ外交が弱腰であるということをかなり批判している側面があると思うんですけど、それはアメリカのメディアをかなり反映させた立場であって、もっと強く紛争を未然に防ぐ、あるいは介入するというということを期待するということ自体が。もうアメリカにとってはそれはできない。先ほど岡本さんが仰ったように2200万人の退役軍人がアメリカにいて、死者がイラク戦争から7000人。少なく見えるかもしれませんけども、それを何十倍も上回る負傷者たち、障害者たちがアメリカ各地に住んでいる。その人たちがベトナム戦争のとき以上に低所得、そして職業がない地域に住んでいる。それが大変大きな波及効果といいますか、人々の憤りというものを煽るといいますか、定着させる力としてずっと働いていたんですけども。大きなメディア、日本もアメリカのメディアはその人たちには目を向けてこなかったということは間違いないと思います。
大越氏:オバマ政権は、あまり強いアメリカというのは打ち出してこなかったはずなんですけど、でも実際アメリカの根底には強いアメリカというのがいつも意識にあって、メディアの中にもあったのかもしれないですし、そういった思いが国民の中には決して政権は我々の方を向いてくれていない。先ほどもあった退役軍人とか家族であるとか、忘れ去られた労働者であるとかそういう思いが積み重なった怒りのマグマというものなんでしょうか。
岡本氏:基本的にはそういうことだと思います。アメリカの平均的な市民にとっては大体、州の外にも出たことがない。それで日頃、目にするのは自分の息子がいつまで経っても就職の口がない。あるいは自分のいとこが大学の授業料が高すぎて学校へ行けない。そうして目の前でいろいろな工場が閉鎖されている。そのときにアメリカの利益優先という、これは大変に響きますよね。彼らにとってみれば、それはメキシコの国境に壁を築こうが、イスラム出て行けとか、それはインテリの人にとってみれば眉をひそめる発言でも、自分にとっては関係ないということですね。
大越氏:しかしアメリカはやっぱり自由とか民主主義という価値を損得でない価値を持っている国として尊敬を集めてきた面があります。これが失われるのはアメリカにとっては、ものすごい大きな損失ではないでしょうか。
キャンベル氏:トランプ次期大統領の言動を見て予測できることは、リールを切っていく方針ですね。そうしますと例えば、NATOであるとか貿易協定であるとか、気候変動を抑えるパリ協定であるとか、そういう大きな国際社会の中で調整されたものっていうものを下支えているのがアメリカの自由であるとか共栄であるとかっていう、そのときそのときの損得勘定の中で生まれたものではなくて、ずっと持続しているものとして基盤としてある。それが揺らぐとすると多分、誰もそれは寄って…。自分から損をするような、血を流すようなことには組みしない世界になっていくだろうと思うんですね。
大越氏:トランプ氏もそのことに意を持ち出したのかは、このところの言動を見ますと、やや慎重かなという感じがします。もともとトランプ氏が大統領選挙に当選すると予測する人は殆どいなかったといっていいと思うのですが、本人もひょっとしたらそうだったかもしれません。実際に、しかし当選をしますと打って変わって慎重な出だしという印象なんですが、実際に取材をしていてどのように感じていますか?
田中氏:その通りだと思います。これまでのところ選挙戦の最中とは180度変わったといっていいほど、その言動は変化しています。トランプ氏は早速、オバマ大統領そして深刻な亀裂が生じました共和党の指導部とも会談しました。また安部総理大臣をはじめ各国の首脳とも電話階段を重ねています。これまでとは打って変わって穏やかな対応で、まずは国内外の不安を払拭して融和を図ることを強く意識している様子がみてとれます。大統領に選ばれてから初めてのメディアとのインタビューでは国の融和を強調するとともに、声高に撤廃を集中してきましたオバマケア(医療保険制度改革)について一部は存続させる考えを示し、柔軟に対応していく姿勢も示しました。今後の政権運営でトランプ氏は、自ら掲げてきた政策を実行できなければ支持者の失望を招き、逆に強行すれば亀裂は一層深まるというジレンマも抱えています。政権の高官人事が早くも本格化する中、トランプ氏は政権運営にあたっては次期副大統領で長年にわたって下院議員を務めた経験を持つマイク・ペンス氏が大きな役割を担うとして、政権中枢の顔ぶれがトランプ氏の今後の出方をうかがう上で焦点となっています。
大越氏:アメリカの進む方向が大きく変化をして、世界の秩序も変わる可能性が出てきた中で、日本はどう向き合っていくべきなのか。主にこれからは経済と安全保障の面で見ていきたいと思います。まずは経済です。トランプ次期大統領「有権者との契約」という表現で、大統領就任から100日間のアクションプラン、つまり実行のプランを発表しています。その中で目を引くのが、アメリカの雇用を守るためとして打ち出したNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し、そして廃棄も含んでいるということですね。そして日本もまさに当事者の一人ですTPP(環太平洋パートナーシップ協定)からの離脱です。自由貿易の推進、そしてグローバル経済の旗振り役を務めてきたアメリカが保護主義へと大きく傾いていくとすれば、日本の通商政策もまた岐路に立たされることになります。
<“内向き”アメリカ経済 日本はどう向き合う?>・トランプ氏の予想外の勝利に、日経平均株価は1日に1000円以上の値動きを見せる乱高下となった。TPPからの離脱など従来の路線を覆すトランプ氏の主張に先行きへの不透明感が強まった。
選挙期間中に言っていたことを全部実行したら、とんでもないことになります。(トランプ氏が)優れた経営者であれば現実を直視して、国のあるべき姿を模索することはありえると思います。今のところ(トランプ氏が)翻意する可能性があるかと言われても難しいですが、私はそういうことに期待しています。道は険しいと思いますが(日本商工会議所の三村明夫会頭)・トランプ氏は実際どこまで選挙中の発言を実行に移すのか。ブッシュ政権など共和党政権に多くの高官を送り込んできたシンクタンク(アメリカン・エンタープライズ研究所)のデレク・シザーズ氏に聞いた。
TPPは死にました。トランプ氏は当初からTPPが気に入らないと言ってきました。トランプ氏を阻止できるのは議会ですが、大統領を敵に回すことはないでしょう。TPPは今回の大統領選挙によって、息の根を止められたのです(シザーズ氏)・シザーズ氏はトランプ氏がまず力を入れるのはアメリカ国内の経済政策だという。7年にわたって景気の拡大は続いているものの格差は広がり、人々の間に不満が高まっているからだ。
・就任から100日間で実現するとしている公約の中にも、所得が伸び悩む中間層を支えるための大幅な減税や、雇用を守るために企業の海外流出を食い止める措置などが盛り込まれている。
アメリカ経済にとって貿易は最重要課題ではありません。経済規模が巨大なので貿易面でうまくいかなくても国内経済がしっかりしていれば大丈夫なのです。日本はTPPが仕切り直しとなっていることに気づかなければなりません。代わりの提案をする方がチャンスは広がるでしょう(同上)・内向き志向は資本主義そのものを変えようとしている。現代を代表するフランスの経済学者ジャック・アタリ氏はそう指摘している。
今、誰もが「自分のために」と閉じこもる傾向が強まっています。イギリスのEUからの離脱も、他者は関係ないという考えの表れです。経済のグローバル化、成功の秘訣は他者の利益を自らの利益と認識することです。自国の利益のみを追求する内向き志向や保護主義が、資本主義自体を崩壊に向かわせています(アタリ氏)<反グローバル化で経済の影響は>・みずほ総合研究所欧米調査部長の安井明彦氏(日米の経済事情に精通したエコノミスト)。
大越氏:経済の超大国アメリカが内向きになって保護主義の傾向を強めると、どんな弊害が考えられるのでしょうか。
安井氏:経済的には貿易が縮小してしまうということが懸念されます。これまでの自由貿易体制というのは、アメリカがリードしてきたわけですから、これが保護主義にいくということで、それが他の国にも連鎖していってしまう。そこが懸念されるところです。
大越氏:みんな保護主義になってしまえば、経済規模が小さくなってアメリカを守るといいながらアメリカ自身の経済規模も縮小するかもしれないということですか。
安井氏:トランプさんが言っていること、政治と経済の間には落差があるということなんだと思います。有権者の不満をグローバル化というところに持ってきているところがトランプさんなわけなんですけど、実際にはアメリカもグローバル化の恩恵を受けているわけです。公約の中にはNAFTAを見直すと言っていましたけど、NAFTAっていうのは使っているのはアメリカ企業なんです。メキシコで作った車をアメリカに持っていく。これはアメリカ企業が一番使っている制度ですので、実際に経済的な悪影響というのはアメリカにも及んでくる。ですので政治と現実の落差をどう埋めていくのか。ここがポイントになっていくと思います。
大越氏:トランプさんの主張は絵に描いた餅になりかねませんよね。
キャンベル氏:恩恵を受けてるというふうに安井さんがおっしゃって、その通りだと思うんですけども、どちらのアメリカに目を向けるかによって恩恵の比重とか、あるいはそれが被害であったりということがあるような気はするんです。ワシントン州からカリフォルニアの南部までが全部、ヒラリー・クリントンに投票をして61%の大変高い。そこはロッキー山脈が殆ど国境のように見えてしまうっていうことは、新しい経済に非常に適した非常にうまく、まさに恩恵にあずかっている地域の人たちにとってはその通りですけれども。それ以外の内側の人たちが内向きになるということもやっぱり現実として…。
大越氏:TPPは死んだという衝撃的な発言もありました。アメリカではそうやって受け止められていますよね。日本はそうはいってもTPP、自由貿易の恩恵を最大限にするために日本の政府・与党としては関連法案の衆議院通過を行ったりということで、それを旗振り役を務めていくんだという意思を示してますよね。これは正しいといえますか?
岡本氏:正しいと思います。TPPが仮に死んだとしても可能性は大きいんでしょうけども、TPPというのはGDPの4割ですよ、参加国3か国全部入れますと世界のGDPの4割です。じゃあ日本はそこで挫折するのか。例えばRCEPというASEANプラス韓国、中国、ニュージーランドやオーストラリア、GDP3割。あるいは、TPPの先を見据えたエフタープというものもある。世界のGDPの6ウェアりになるです。日本は自由貿易の旗を振るべきだと思うんです。それ以降は日本は後ろを向きすぎていた。アメリカが今、引いちゃったから、日本にとっては自由貿易が必要ですから前に出ていくべきだと思います。
大越氏:テーマを安全保障に移していきましょう。アメリカは同盟国との安定と、それらの責任を果たすと誓ってきました。しかしトランプ政権も果たしてその方針を引き継ぐのでしょうか。日本との関係で見ましても。トランプ氏はアメリカ軍の駐留経費をもっと日本が負担するべきだという発言をしています。そして、日本が自ら核武装することを容認するような発言すらしています。どこまでが真意なのでしょうか。
<政策ブレーンが語る日米同盟のゆくえ>我が国はサウジアラビア、日本、ドイツ、韓国その他多くの国を守り続ける余裕がない。北朝鮮が持っている以上、日本も核兵器を持ったほうがいいのでは(演説するトランプ氏)・日本にアメリカ軍の駐留経費の負担の増額を求め、核保有を容認する発言もしてきたトランプ氏。日米同盟はどうなるのか。トランプ氏の安全保障製作のアドバイザーを務めるジェフリー・ゴードン元海軍中佐が取材に応じた。
トランプ氏はアメリカ一国でいつまでも世界を守れるとは思っていません。もし同盟国が公平に負担をしないのなら、自分の国は自分で守ってほしい。6対4や7対3の負担では不十分で、良い取り引きとは言えないのです(ゴードン氏)(トランプ氏は日米同盟をどのように変えたいのか?)
日本が負担を増やせば同盟そのものを変えようとは思っていません。日本の米軍機も政府間の協調も米軍と自衛隊の連携にも好意的です。彼は日本や韓国における米軍のプレゼンス(存在)がアメリカ自身の平和と安定に重要であると理解しています。アメリカ国民も北朝鮮の脅威や中国の台頭に対応するため、米軍の駐留は正しいと考えている。だからこそ“同盟国は我々を助けろ”と警告しているのです。カネを支払う余裕はないのです(同上)(トランプ氏は日本が負担を増やさなければ軍の撤退も示唆したが、今も選択肢か?)
トランプ氏はビジネスマンとして長年、不動産やホテルを扱ってきました。タフネゴシエーターで「交渉術」という本も書いているほどです。交渉していく中で米軍の撤退はありえます。タフネゴシエーターのトランプ氏が大統領になるのですから、日本は真剣に考えるべきです(同上)<新たな関係構築へ 同盟国・日本の課題は>・こうしたトランプ氏の姿勢に日本はどう向き合っていくのか。
日米同盟は普遍的価値で結ばれた揺るぎない同盟です。トランプ次期大統領とも世界の様々な課題にともに協力して取り組んでいきたい(安倍晋三総理大臣)・大統領選挙の翌日、安倍総理大臣はトランプ氏と電話で会談。17日にニューヨークで会談を行う方向で一致した。過激な発言を繰り返してきたトランプ氏と新たな関係を築く上での課題は何か。防衛大臣の政策参与を務める森本敏元防衛大臣はこう語る。
彼は政治的な経験がないので、政府が持つ本当のインテリジェンス(機密情報)をまだ知らされていないと思うんです。実態をきちっと説明することよって彼が理解して、路線の柔軟な修正をしてくる要素は多分にある。プロセスの中にどのようにいち早く関与するかということが大事なのです。日米首脳会談が行われるが、そのスタッフとの人間関係を軸にして、できるだけ早い時期にスタッフレベルでの政策協議を始めていくと。そのことによって日本が考えていること、できることできないこと、日本がこれから協力すべきことを分野ごとに決めていくチャンスが広がっていく(森本氏)大越氏:トランプ氏は米軍の駐留経費を、もう自分たち日本は日本でやってくれよと、全部というくらいの言い方までしている。日本の核武装を容認するような匂わすような発言もしている。もっと自主防衛をしなさいというメッセージを送ってきている。
日本は顕著な財政的貢献をしているので「これ以上払え」というのであれば新しい枠組みが必要だと思いますし、仮に日本の核武装という議論になったら同盟そのものを破滅させる。同盟そのものが“離婚”をしていく。その道はアメリカにとって決して利益にならない。日本は今の憲法の枠組み、日本の非核政策、アメリカに攻撃作戦、攻勢作戦、日本は防勢作戦という役割分担。この基本的な枠組みを日本は次の政権から何を言われようと、これを変える考えはないと思います(森本氏)・一方、森本氏は今後日本が向き合っていく上でトランプ氏ならではの難しさも指摘した。
今までとは少し違った政策のアプローチを考えていかないといけない。大統領がじっといて周りが全部支えて、皆さんが振り付けた通りに振る舞ってもらう、そういう政権ではないかもしれないと思う。大統領のリーダーシップが今までになく強い政権ができる可能性がある。我々は念頭に置かないといけない(同上)大越氏:日本の外交の正念場ですね、これは。
日本の外交、安全保障というか、結局は日本の将来というものの正念場がこれから数年の間に来る(同上)<“米国第一主義”安保への影響>大越氏:沖縄の基地負担の痛みとかを知りながらも、日米両政府それでも日米同盟を大事にしてきたわけですよね。それは変わらないにしても駐留経費の問題もあるとして、かなり高めのボールを投げてくるんじゃないかとトランプ政権はと思うんですけど、どうでしょうか?
岡本氏:そんな投げられないんじゃないですかね。基本的にトランプさんは何も分かってなかったわけですよね。それから申し訳ないけど、さっきビデオに出てきたゴードンさんも分かっていない。要するに日米の駐留経費というのは地位協定というもので定まっていて、これ以上出すとアメリカ軍は日本の傭兵になってしまうというギリギリのところでやっているわけですから。ただ政治的にもう少しトランプさんの顔を立てるようなことができるような気がしますけど、基本は難しいでしょう。日本は75%を負担している。米軍が仮に日本を引き揚げて本国に再配置したら、そっちの方がお金がかかるところまできているんです。基本的にトランプさんは日米同盟がアメリカの利益になっているということを分かっていない。ただこれから周りに国防政策の担当者たち、アドバイザーで付きますから彼は軌道修正していかざるを得ないと思います。
大越氏:しっかり日本も打ち込んでいく必要があるんですね。一方でディールという言葉が出てきましたね。いろいろ経済的な取り引き、損得勘定がさっきも出てきました。安全保障の問題まで損得勘定で考える傾向があるのではないかとちょっと心配があるのですが、その辺エコノミストとしてどうご覧になりますか?
安井氏:ビジネス出身ということですので、どうしても金銭的な部分であったり、そのときの最善のことをやっていく取り決めをしていくというふうになりやすいのは事実だと思います。もちろん安全保障だったり政治の部分ではお金だけでは図れないところがあるわけですから、逆にそこを分かってもらういい機会と考えた方がいいと思うんですね。実際にはビジネスの世界でも全てがお金ということではなくて、お互いの信頼関係を考えた中でディールをするということもあるわけですから、そこはやはりきちんと説明をしていって何がアメリカにとっても日本のためにとってもいいだということを話していく、いい機会だと考えた方がいいんじゃないかと思います。
大越氏:そのトランプ氏、選挙戦の中で明らかにしてきた政治姿勢の中では内向きという言葉だけでは済まされないものもありました。それは多様な移民社会という伝統の価値観であったり、正面から疑問を呈する発言であったり、イスラム教徒の入国を禁止すると言って世界を驚かせたこともありました。そうした排他主義が世界中に波及するのではと懸念で呼んでいます。ヨーロッパで近く行われる主な選挙や国民投票。こうした国々では反移民を声高に訴える勢力がトランプ氏の当選で勢いづいています。
<世界に拡散“自国第一主義”>・アメリカ大統領選挙の2日後、イタリアで大規模な集会が開かれていた。主催したのは、既存の政党を強く批判する新興政党。抜本的に政治を変えようと呼びかけた。
結局トランプ氏が勝ったのです。世界は目を覚まし、別次元の論理で回り始めたのです(イタリア「五つ星運動」の集会)・今、トランプ氏の勝利を機に支持者獲得の動きを加速させている。
・こうした動きの兆しを大統領選挙のさなかに取材していた。トランプ氏の盟友として選挙活動を支えてきたジョージ・ロンバルディ氏。
トランプ氏はこの65階と66階に住んでいる。私の部屋はその下の階だ。(トランプ氏の階には)入ってはだめだよ(ロンバルディ氏)・大統領選挙まで1か月あまりとなったこの日、トランプ氏を支持する下院議員と会ったロンバルディ氏。ヨーロッパの同じ価値観を持つ勢力との連携を模索していた。
イギリスのEU離脱は決まった。来年にはフランス大統領選がある。イタリアの首相も代わるだろう。ヨーロッパ全体が我々にとってベストな方向に変わるはずだ(同上)・実はロンバルディ氏のもとにには連日、ヨーロッパの政治家などが訪れていた。この日やって来たのはイタリアの議会関係者たち。
イタリア人はトランプ氏のことをどう思っているんだい?(同上)イタリアには毎日大勢の移民が押し寄せています。ですから彼の排外的な主張は、イタリアの多数派に近いのです(イタリア議会関係者)来週はオーストリアからの視察、フランスからも視察が来ることになっています。彼らは“トランプ旋風”を自国でも起こしたいと考えているのです(ロンバルディ氏)・トランプ氏が勝利した今、内向きで自国の利益を第一に考えるうねりがヨーロッパで広がっている。ドイツでは難民の受け入れに反対する新興政党が台頭、過激な主張を繰り広げている。
トランプ氏の勝利でドイツは歓喜に満ちています。私たちは世界中で始まった新しい政治の夜明けを支持します(ドイツAfdのペトリ党首)・そして来年大統領選挙を控えたフランス。立候補を表明している極右政党の党首がトランプ氏の勝利を受け、自信を深めている。
EUからの離脱を支持したイギリスに続き、トランプ氏も勝利しました。古い秩序は葬り去られ、新しい世界をつくり出す第一歩を踏み出したのです。トランプ氏が差し出した手を握って、フランスも自国を最優先し利益を守っていかなければなりません(フランス国民戦線のルペン党首)・フランスの経済学者ジャック・アタリ氏は、自国の利益のみを追求する考え方は国家間の衝突に繋がりかねないと警鐘を鳴らす。
これまで世界はグローバリゼーションによる統治を目指してきました。しかし今、逆戻りし始めています。過去には内向きになったが故に大恐慌や世界大戦が起きたのです。歴史から学ばなければなりません(アタリ氏)<今後どうなっていくのか ゲストに聞く>大越氏:自国第一主義がともすると危なっかしい方向に走るかもしれないと思う方、多いと思うんですね。それがもし危なっかしい方向だとすると、それを留めるためには何が必要でしょうか。
岡本氏:アメリカをできるだけ世界中の出来事にエンゲージさせる、関与させ続けなければいけないと思いますね。それは日本の役割だと思いますね。ただ、そのためには日本自身がもっと世界に関与しなければいけない。例えば経済協力予算なんていうのはピークが1997年で、当初予算ベースで見るともうそのときの半分になっちゃっているんです。日本はもっと積極的にいかなければならないし、それから先ほど大越さんおっしゃられたように、アメリカが難しいボールを投げてくる可能性がある。それに対応していかなければいけない。しかし悪質なナショナリズムが世界中を席巻しているように見えますけれども、まだ世界の半分以上は良識のある国々、人たち、考え方の人たちなんで、日本はそこを忘れてはいけないと思います。
大越氏:アメリカは今、そういった自国第一主義が危険な兆候をしているとすれば、それに警戒する人たちとの対立が生まれているわけですよね。この対立、溝はどうやったら埋まるというふうに感じますか。
キャンベル氏:私は求心力というよりは遠心力が深まるんじゃないかと感じます。2008年にオバマ大統領が初当選したときに2年後に中間選挙で負けた共和党を解体するようなことを勢いとして入ったわけですけど、同じように民主党は今度、来年党の議長の選挙があるわけですけど、下院で2人しかいないイスラム教徒で黒人の議員を強く推す声が出てきているわけです。つまり鮮明に対立軸をつくって革新をもっと進めていくような構図が生まれると思います。その中でどういうふうに融合していくのか、折り合っていくのか。あるいは対立を続けていくのか。日本はどちらのアメリカに目を向けて比重を置けばいいのか注視しなければいけないと思います。
大越氏:歴史の教訓を生かすべきだと思うのですね。経済が大事ですね。
安井氏:今こそグローバルに経済を強く結びつけていくことが大事なわけですけど、だからこそここから取り残されていると思っている人たちをどうやってすくい上げていくのか。誰でも活躍できる機会を持てる世界をどうやってつくるのか。政策が担う役割は重いと思います。
大越氏:世界各国はいわゆる“トランプ・ショック”の状態から新しく生まれる事態に対してどう対処するか、どう情報を集めるか、そして知恵を絞る段階に入っています。私たちはせめてこのタイミングを国の在り方でありますとか、国と国との共同体の在り方を考える機会としたいと思います。
(2016/11/15視聴・2016/11/15記)
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