Quantcast
Channel: じゅにあのTV視聴録
Viewing all articles
Browse latest Browse all 513

【NHKスペシャル】新・映像の世紀・第6集 あなたのワンカットが世界を変える

$
0
0

【NHKスペシャル】
「新・映像の世紀・第6集 あなたのワンカットが世界を変える」

(NHK総合・2016/3/20放送)
※公式サイト:http://www6.nhk.or.jp/special/

<感想>


 前回の「映像の世紀」から20年、NHKが「新・映像の世紀」を製作したのは非常に意義深かったと全てを観ての一番の感想でした。


 そして全6回の締めくくりは「あなたのワンカットが世界を変える」。私たち個人が誰でも映像を撮影し、それを世界に向けて発信することができるようになったこの10数年の大きな変化を幾つかの出来事を交えて紹介する内容でした。

 一人の少年の映像がきっかけとなってアメリカ社会を動かす力となったこと。また“アラブの春”に代表されるような革命をも引き起こす力になったこと。また、ISに代表されるようなテロリストのプロパガンダにもなっている負の側面もきちんと指摘しています。非常に秀逸な回だったように思います。

 私が一番感じたのは、映像発信というツールを私たちが手にしたことは「誰もが都合の悪いことを隠すことはもはや出来ない」という社会の大きな変化をもたらしたことだと思います。

 NHKの会長がどんなに時の権力者のお友達であっても、それをも上回るパワーがインターネットを中心に広がったことは昨年秋の安保法案のときに証明されました。もはやメディアが世論をつくる時代は終わりを告げようとしていると言っても過言ではないと思います。そして「個」の積み重ねが世論をつくることができる時代になりつつあります。

 これは為政者が自分たちに批判的なテレビのキャスターを引き摺り下ろそうが、テレビ局の電波を止めると脅したところで無駄です。まあ、それでもそれにメディアが一丸となって抵抗しようとしないところが、メディアの体たらくを表しているようにも見えますが。

 いずれにしても新しい時代が来たのだということを本当に私も強く感じています。こんな思いつくままに書いている私の文章を毎日延べ2000人近くの方が読んでくださっているのですから。そう考えると凄いツールを手にしたのだなと実感します。

 こんな時代を生きる者の一人として、これからも可能な限り書き続けていきたいですね。もちろん革命など企ててはいませんが、社会のおかしいことについてはおかしいと小さな声をあげ続けたいので。

 最後に、おそらく「新・映像の世紀」は後日まとめて再放送があるかと思います(懐の余裕のある方はDVDセットでも)。ご覧になっていない方はぜひ観てみてください(NHKの回し者じゃありませんよ)。

 あともう一つ、若い世代が身近に居る方は「とにかく観てみよう」と声掛けしてみてください(学校の先生ならぜひ授業で視聴する機会を)。それは私が「映像の世紀」を観たのが10代の頃でしたので。絶対に将来大人になったときに自分の考えに少なからぬ影響を与える作品になると思います。

<視聴メモ・番組内容(いわゆるネタバレ)が含まれています>

※見出しは当方で付けました。

・火星で活動を続ける探査機から届いた映像、太陽が沈み火星に夜が訪れる。夜空に一つの星が輝く、地球である。この星で映像が発明されて100年余り、映像は人類が蓄積した記憶である。

今ちょうどニューヨーク上空にいる。煙が上がっているのが見える(国際宇宙ステーションからの撮影・2001年9月11日)

・21世紀最初の年、悪夢の記憶が刻まれた。

神はアメリカを撃たれた(ビン・ラディン)

・映像は世界を引き裂き、底知れない憎悪を生み出した。
・映像は時に時空を越えて人々を繋ぐ。大災害に見舞われた日本、その悲しみと痛みを世界の人々が分かち合った。誰もが撮影者となり、誰もが発信者となる時代、あらゆる出来事は映像化される。
・迷子になった子どもを見掛け、手を差し伸べる運転手。教室で起こった突然の出来事、愛する人との再会。人生のささやかな一場面も世界の記憶となる。
・映像に込められたメッセージは瞬時に世界を駆け巡る。喜び、怒り、憎悪、涙。名も知れぬ誰かが撮った映像が秘められた事実を暴き、国を揺るがし、世界を変える。
・新たな映像の世紀が到来した。100年の時を映像で追体験する「新・映像の世紀」。私たちは今このような世界に生きているのか、その答えを映像の中に探していく。
・激動の時代を発掘映像で追う。映像が世界を引き裂き、世界を繋ぐ。その巨大なパワーは何をもたらすのだろうか。

<アメリカ同時多発テロ 世界は引き裂かれた>
・2015年9月11日、ニューヨーク。あの日から14年、光のツインタワーがこの日も夜空を彩る。それは3千人もの犠牲者を出した史上最大のテロ事件だった。
・2001年9月11日、いつもと変わらない静かな朝だった。

ご覧ください。昨夜、道路の陥没事故が起きました(ローカル局のキャスター)

・ローカルニュースはワールドトレードセンター最後の姿を映していた。
・既に事件は始まっていた。アメリカ各地の空港の監視カメラにはハイジャック犯たちがセキュリティチェックを安々とくぐり抜ける様子が映されていた。
・その頃、ブッシュ大統領(当時)は訪問先のフロリダで日課の朝のジョギングに出掛けていた。

めでたい、記録更新だ(ジョージ・W・ブッシュ大統領)

・午前8時24分、ハイジャック犯の第一声がボストンにある航空管制室に飛び込んできた。

アメリカン航空11便、呼んだか?(航空管制官)
我々は複数の航空機を乗っ取った。おとなしくしていれば問題ない、空港に戻る。もし少しでも変な動きをすればお前や航空機は無事ではいられない(ハイジャック犯)


・航空管制官は直ちに軍に連絡した。

航空機がハイジャックされニューヨークに向かっている。F-16戦闘機に緊急発進を要請する(航空管制官)
これは実戦か?それとも訓練か?(アメリカ空軍 軍曹)
いや、これは訓練ではない(航空管制官)


・ニューヨークの消防署を密着取材していたフランスの撮影クルーの映像に1機目の突入する様子が映っていた(午前8時46分)。
・テレビ局はCMを中断して臨時ニュースを開始した。

ニュースが飛び込んできました。衝撃的な映像です。ワールドトレードセンターの今の映像です(キャスター)

・世界のテレビ局も次々と中継を開始した。そのときだった。2機目の突入の瞬間を世界はリアルタイムで目撃した(午前9時3分)。

なんてことだ!飛行機がもう1機突っ込んだ(キャスター)
誰かに狙われたんだわ(キャスター)


・訪問先の小学校でブッシュ大統領が第一報を受ける瞬間が映像に記録された。首席補佐官は告げた。「2機目が突入しました。アメリカが攻撃されています」。それから7分間、大統領は子どもたちの絵本の朗読を聞き続けた。
・2機目の突入から56分後、ワールドトレードセンターは地響きを立てて倒壊した(南棟倒壊・午前9時59分)。
・3日後、ブッシュ大統領は同時多発テロの現場を訪れた。テロとの戦いを宣言した大統領の支持率は90%に達した。
・テレビの通常番組は1週間にわたって中止された。流れ続けるテロの映像によって、人々の恐怖と悲しみは憎しみへと変わっていった。パレスチナ出身でニューヨーク在住の思想家・エドワード・サイードはこの状況に警鐘を鳴らした。

報道番組は翼を持ったこの忌まわしい恐怖の怪物を絶え間なく、しつこいほど家庭に持ち込んでいる。恐ろしいほどの喪失感、怒り、憤懣、弱みを傷つけられたという感情、復讐したいという欲望、映像は抑え切れない報復の思いをかき立てるだけでなく、増幅までしたのだった(サイード)

<映像プロパガンダ戦 アメリカvsテロリスト>
・アメリカはテロ組織アルカイダの引き渡しを拒むアフガニスタンへの攻撃を開始した(2001年10月)。しかしその2時間後、世界のテレビ局の画面は一つの映像で埋め尽くされた。アメリカの攻撃に合わせて送られてきたアルカイダのリーダー・オサマ・ビン・ラディンのビデオメッセージである。

すべてのイスラム教徒は信仰を守るために力を尽くさなければならない。嵐を巻き起こし、聖なるムハンマドの地から虚偽を吹き飛ばすのだ(ビン・ラディン)

・圧倒的な軍事力を持つアメリカに対し、ビン・ラディンが武器としたのは映像だった。彼のメッセージをきっかけに超大国アメリカに対し、溜まっていた憤懣を爆発させるイスラム教徒が世界各地に現れた。

アラーは偉大なり。正しいのは誰だ。オサマだ!(パキスタンのイスラム教徒)

・アメリカはテロとの戦いを拡大した。アフガニスタンに続き2003年にイラクに侵攻、独裁者フセインの像が倒された。イラク国民の喜びを伝えるニュース映像には「アメリカの戦争には正当性がある」と世界にアピールするものとなった。
・戦争は終わらなかった。イラクはテロの泥沼と化していった。
・さらにアメリカの憎しみをかき立てる事件が起きた。イラク人のテロ容疑者など約4千人が収容されていたアブグレイブ刑務所、アメリカ兵の内部告発によって収容者への虐待を示す写真が明るみになった。当時非公開だった虐待の映像、暴行、レイプなどが度々起きていた。

虐待は効果的だった。だからもっとやろうとみんなで話していたわ(虐待を行っていた女性兵士)

・アメリカ軍は兵士たちを拷問に駆り立てた要因の一つに、あるテレビ番組を挙げた。世界的な大ヒットドラマ「24」。

テレビドラマがアメリカ兵に影響を与えているとは信じがたい話です(キャスター)

・「24」はイラク駐留のアメリカ兵の間で大人気だった。主人公の秘密工作員は暴力に訴えテロリストを尋問する。それが兵士に悪影響を与えたと、アメリカ軍はテレビ局と製作会社に抗議した。

映像を見た兵士は拷問するようになるか?そんなことはないと思う。極端な行動をしてしまう人は、何を見ようが何を読もうが、その衝動が心の奥底にもともとあったのだと思う。では映画「ロッキー」を見た少年は、ロッキーのようになりたいと思うか?そうかもしれない。映像は人間の感情をかき立てることもあるだろう(ドラマ「24」プロデューサーのジョエル・サーノウ)

・虐待を知りイラクで巻き起こった怒りのデモは、イスラム諸国に広がった。虐待が発覚して2週間後、インターネットに一つの映像が公開された。イラクで働いていたアメリカ人がアブグレイブ刑務所と同じ色の囚人服を着せられ、殺害される映像である。テレビ局に映像を送りつけるのではなく、独自のホームページからの発信だった。

アブグレイブの囚人の尊厳は、この男の血と魂をもって償われる(映像の音声)

・このテロ組織は後に自らを“イスラミックステート”と名乗った。

<インド洋大津波 映像革命の始まり>
・2004年12月、一般の人が撮影したマレーシアの浜辺。無邪気に遊ぶ子どもたちの向こうから高波が迫った。スマトラ島沖地震によるインド洋大津波、市民が撮影した映像が世界のニュースのトップを埋め尽くした。

一般人が撮影した映像が、いかに津波が巨大だったかと表しています(キャスター)

・プロのカメラマンではなく一般の人々が撮影した映像が報道の主役となる最初の出来事だった。このニュースを観ていた一人のアメリカ人の若者がその後、巨万の富を生むアイデアを思いついた。

これは市民が撮影した最初の大事件でした。その場には報道陣がいなかったのです。市民の映像はどれも圧倒的でした。そこで誰でも映像を投稿できるサイトを作ろうと考えたのです(YouTube共同設立者のジョード・カリム)

・翌年、ジョード・カリムは仲間とともに動画投稿サイト「YouTube」を開設した。自らが投稿した18秒の映像が今や数十億クリックとも言われるYouTubeの最初の映像となった。

象さんは鼻が長くてかっこいいね。こんなもんかな(カリム)

・当初は動物や赤ちゃんの可愛い映像を楽しむ場に過ぎなかった。だがその後、誰もが自由に映像を発信できるツールとして急速に進化を遂げていった。
・身体能力を極限まで追求するパルクールという遊び、YouTubeによって世界的に広まった。
・自分の娘を生まれたときからずっと撮影し続けているオランダ人の映像作品「ロッテのポートレート」。世界で延べ5千万人が観た。世界で最も有名な普通の家族と言われた。

昨日は再生回数が100万を超えてすごいって思いました。今日はもう200万でした。メディアも注目しているみたいです。何が起きているのか分かりませんが、とにかくすごいことです(ロッテ・ホフミースターさん)

以前は一部の人間が映像を作り、その映像がどこでどう見られるかもコントロールしてきた。しかしインターネットの時代には誰もが映像を作り、そして見てもらう場所も持っている。自分のメッセージや感情、経験や才能を表現できるんだ。主人公は投稿する人々なんだ(YouTube共同設立者のチャド・ハーリー)

・誰もが自由に発信できるようになった映像は、国家のコントロールも越えていった。

けが人を救出しているぞ。
わかってる、でも撃たせろよ。
車ごと粉々だ、ハハハ(米軍ヘリの流出映像・イラク)


・イラクではアメリカ軍のヘリコプターが民間人を銃撃する映像が流出、世界から非難を浴びた。
・アフガニスタンではアメリカ兵がヘルメットに装備されたカメラの映像を投稿することが流行、軍事情報の流出として問題になった。
・そしてテロリストたちもインターネットを利用した。次々と投稿された自爆テロの映像、テロリストの戦意を高揚させ、世界を恐怖に陥れた。

<ワンカットが社会を動かす>
・1分間に数百時間というペースで世界に溢れ続ける映像、その一つが社会を大きく動かした。始まりは2010年にある同性愛者のカップルが投稿した1本の映像だった。

私の学生時代は悲惨でした。ゲイであったせいで学校では容赦なく、いじめの対象になりました。でも人生は突然よくなったんだ。

・二人のメッセージから勇気を得て、他の同性愛者たちも自分の辛い経験を次々と投稿するようになった。合言葉は「it gets better(きっと良くなる)」。

・そこに毎週のように投稿を続ける14歳の少年がいた。ジェイミー・ロドマイヤー、同性愛を理由に学校で陰湿ないじめを受けていた。

今日も「it gets better」と言おうと思ってビデオを撮るけど、今、僕はとてもつらいんだ。ほら見えるかな、ここ(リストカットの跡)。でもきっと良くなるはずさ。

・映像を投稿した5日後、ジェイミー君は自ら命を絶った。彼の死を悲しむのは身近な人たちに留まらなかった。

ジェイミー、そして同じ悩みを抱えているすべての人へ。ありのままで生きればいいんだ。

・インターネットに寄せられた映像やメッセージは1万件を超えた。音楽界のスーパースターも彼の死を悼んだ。

ジェイミー君、今夜も天国から私たちを見守ってくれていますよね。この曲をジェイミー君に捧げます(レディー・ガガ)

私はもう耐えられない
私は祈っている
ただ自分の髪と同じように
自由に生きて死にたいと
私はもう耐えられない
私は祈っている
ただ自分の髪と同じように
自由に生きて死にたいと
私はもう耐えられない
ジェイミー あなたは変人じゃない
私はこの腐ったアメリカの町で戦い続ける
私はもう耐えられない


・同性愛の人たちの苦しみを理解しようとする人たちが少しずつ増えていった。
・人々の間に広く共感を呼んだ映像があった。双子のロード兄弟が同性愛者であることを父親に告白する映像である。

なんて言っていいか分からないけど、僕はゲイなんだ。弟も同じだ。それを伝えたくて電話したんだ。
OK(父の声)
父さんには自分の口から伝えたくて。
父さんも何て言っていいか分からないけど、二人への愛は変わらないよ。自分の人生を生きるんだ(父の声)


・2015年6月、ロード兄弟はYouTubeで輪を広げた仲間たちとともにアメリカ連邦最高裁の前にいた。この日、連邦最高裁は同性婚禁止の法律を違憲とする画期的な判決を下した。「it gets better」が始まった5年前には5つの州とワシントンD.C.でしか認められなかった同性婚が全米で認められた瞬間だった。
・この夜、ホワイトハウスは運動の象徴であるレインボーカラーにライトアップされた。

<アラブの春 映像がもたらした革命>
・2011年、一人の若者が発信した映像が独裁国家を転覆させる革命にまで結びついた。北アフリカのチュニジアから始まった「アラブの春」である。
・きっかけはチュニジアの小さな町の果物売りの若者が露天での商売を役人に咎められ、抗議の焼身自殺を図ったことだった。その場面を目撃した人々が役所に怒りをぶつける様子が市民によって撮影された。地方都市のこの事件、地元メディアは報道しなかった。

僕たちは映像を撮影し編集して、フェイスブックに投稿したんだ。それが映像を広める唯一の方法だったんだ。自由に発言できるメディアはなかったから(映像を撮影した人物)

・多くの人が役人の横暴な振る舞いに苦しめられてきた。怒りを共有した人々が各地でデモを起こし、さらにその映像が次々と投稿され新たなデモを引き起こした。
・ベンアリ大統領はデモの沈静化を狙い、まだ息があった果物売りの若者を病院に見舞った。その姿は国営テレビで大々的に放送された。
・しかしテレビカメラのない場所では、大統領の指示を受けた警官隊がデモ隊に発砲。多くの人々が負傷し死者も出た。その映像もまたインターネットに投稿され、国民の怒りをさらに増幅させた。
・デモ隊は政府打倒を叫び始めた。権力を前に立ち上がる市民の勇気は兵士たちにも伝播した。大統領からの発砲命令を兵士たちは拒否、遂に大統領は国外に亡命した(2011年1月)。

大統領は職務を遂行できなくなりました(記者会見の映像)

・若者が焼身自殺を図ってから1か月足らずで、チュニジアの独裁政権は崩壊した。
・チュニジアのこの動きは、アラブ全土に連鎖していった。

辞めろ 辞めろ ムバラク(デモ参加者の声・エジプト)

・インターネットに投稿されたある映像(放水車の前に立ちはだかる男性が放水車を止める映像)は、エジプト革命の決定打となったと言われる。

すごい 止めたぞ 止めたぞ やった やった!(映像の声)

・アラブの大国エジプトでも、30年に及ぶムバラク政権は3週間で崩壊した(2011年2月)。
・だが「アラブの春」は独裁政権に抑え込まれていた急進的な勢力を解き放つことになった。
・エジプトでは政治の混乱と治安の悪化の中、軍を後ろ盾とする政権が生まれた。
・リビアやシリアでは「アラブの春」は内戦に変わっていった。
・ロシアのメディアが撮影した現在のシリアの映像、人影は殆ど見えない。実に国民の半数が難民となった。

シリアは最悪だ。底なしに最悪だ。日増しにひどくなる。政治家たちは平和への解決策を話し合っているというが、戦争は終わらず何も進まない。希望も平和もない。日々まわりにあるものが壊されていく。僕も心の中から壊れてしまうようだ(“アラブの春”に参加した若者)

<ボストン爆破テロ 進化する映像技術>
・若者たちの絶望を飲み込み膨れ上がっていったのが、過激派組織IS(イスラミックステート)だった。
・2013年4月、ボストンマラソンで2つの爆弾が相次いで爆発、死者3人・負傷者300人が出るテロ事件が起こった。
・この事件の犯人を捕らえたのは、進化した映像技術だった。ボストンの町には至る所に監視カメラが設置されている。その映像を分析していくと、不審な人物が浮かび上がった。警察が注目したのは、帽子を被りリュックを背負った2人組の若者。若者の一人が画面左上にいる。遠くで一つ目の爆弾が爆発。人々がそれに気を取られている中、彼だけが立ち去った。そして爆発後、若者はリュックを持っていなかった。この映像が犯人特定の決め手となった。
・そして逃走する犯人を捉えたのは、赤外線によって温度を感知するサーマルカメラだった。民家の庭のボートに隠れた犯人をサーマルカメラはシート越しに見つけた。テロ事件は5日で解決した。
・世界では2億5千万台の監視カメラが可動していると言われる。至る所に置かれたカメラが私たちの一挙手一投足を見つめている。
・テロ組織も映像技術を進化させている。ISの一連の映像はスタジオで撮影されたと言われている。ハッカーが公表した映像によれば、合成もできる巨大なセット。照明機材も揃っている。
・ISにはメディア部門があり、報道機関などで働いた経験のある欧米人が所属している。彼らは兵士の何倍もの収入を保証されているという。
・プロパガンダ映像には少年兵も多く登場する。ISが次の世代まで続くものだと印象づける狙いがあるとみられる。
・ISには世界各国から2万人もの戦闘員が集まっている。こうしたプロパガンダ映像が今もインターネットを通じて増殖を続けている。

<新たな映像の世紀 世界はどこへ向かうのか>
・2015年3月、国連本部に招かれた一人の歌手がいる。アメリカの歌手ファレル・ウィリアムス。彼が歌った「HAPPY」という歌が世界を結び幸せを運んだとして、その功績を讃えられた。

音楽は僕を幸せにしてくれました。幸せになることは誰もが持っている権利なのです(ウィリアムス)

・「HAPPY」は世界に新しいムーブメントを起こした。その曲に合わせて自分が踊る映像をYouTubeに投稿することが、爆発的に流行した。その数は世界150か国以上、2000本に及んだ。

手をたたこう ハッピーの意味が分かったら
それこそ幸せさ
手をたたこう やりたいことを見つけたら


・映像はやがて試練に立ち向かう人々からのメッセージとなっていった。悲しみと憎悪が渦巻く苛酷な場所でも、人々は「HAPPY」を踊った。

「HAPPY」の映像は世界をつないだ。それを実現したのはビデオを投稿してくれたみんなの創造力と勇気だ。今これまでになかったほど世界はつながっている。この現象を引き起こしたのは他でもない、みんなの気持ちなんだ(ウィリアムスの手記より)

・2015年9月、また一つの映像が世界を動かした。トルコの海岸に打ち上げられた小さな体。シリア難民の一家が生きるため密かにヨーロッパに入国しようとした末の悲劇だった。
・この痛ましい映像を前に、世界中の人々が難民を積極的に受け入れるよう声を挙げた。国家も人種も宗教も越えた。

各地の教会などが難民を一家族ずつ受け入れることを願う(ローマ法王フランシスコ)

・だが混迷を深める世界は、そこから抜け出す道を見い出せず今も多くの命が失われ続けている(パリ同時多発テロ・2015年11月)。テロの恐怖と新たな憎しみがまたばらまかれた。

イスラム主義者は出て行け(集会参加者の声)

・パリ同時多発テロの3日後の映像、広場にイスラム教徒の男性が目隠しをして立っていた。足元にはこう書かれていた。

「私はあなたたちを信じています。私のことも信じてくれるなら抱きしめて」

・憎しみの連鎖を断ち切ろうとする、このささやかな試みも世界に発信された。2日後の映像、この試みに加わるイスラム教徒が次々と現れた。
・映像は時に世界を引き裂き、時に世界を繋ぐ。映像が誕生してから100年余り、それは人類が蓄積してきた膨大な記憶である。
・今、映像は世界を動かす巨大なパワーを持った。誰もが撮影者となり、誰もが発信者となる。新しい映像の世紀に、私たちはどんな記憶を刻んでいくのだろうか。
・インターネットに映像を投稿し、自らの命を絶ったジェイミー君の両親。彼の映像は今も世界の誰かに励ましを与え続けている。

今でもこの映像を見つけた人が連絡をくれることがあるの。ジェイミーの映像は永遠に残ります。10年20年30年40年たっても見られ続けるでしょう。息子の映像がどれだけの人を助け、世界中に広まり続けているかと考えると、映像を作った息子を誇りに思います(母親のトレイシーさん)

前を向いて歩いていこう。自分を信じれば大丈夫だよ。僕の映像を見てね(映像のジェイミー君)

(2016/3/20視聴・2016/3/21記)

【ブログランキング】
▼▼ワンクリック投票をぜひお願いいたします▼▼

にほんブログ村 テレビブログ テレビ番組へ 


※番組関連の作品(画像クリックでAmazonへ)

NHKスペシャル 新・映像の世紀 ブルーレイBOX [Blu-ray]

NHKスペシャル デジタルリマスター版 映像の世紀 ブルーレイBOX [Blu-ray]

NHKスペシャル 新・映像の世紀 オリジナル・サウンドトラック 完全版

※関連ページ(新・映像の世紀)
新・映像の世紀・第1集 百年の悲劇はここから始まった
新・映像の世紀・第2集 グレートファミリー 新たな支配者
新・映像の世紀・第3集 時代は独裁者を求めた
新・映像の世紀・第4集 世界は秘密と嘘に覆われた
新・映像の世紀・第5集 若者の反乱が世界に連鎖した
新・映像の世紀・第6集 あなたのワンカットが世界を変える

※関連ページ(NHKスペシャル)
シリーズ東日本大震災 “26兆円” 復興はどこまで進んだか
私を襲った津波~その時 何が起きたのか~
風の電話~残された人々の声~
ゼロから町をつくる~陸前高田・空前の巨大プロジェクト~
被曝の森~原発事故 5年目の記録~
“原発避難”7日間の記録~福島で何が起きていたのか~
難民大移動 危機と闘う日本人
新・映像の世紀・第5集 若者の反乱が世界に連鎖した
司馬遼太郎思索紀行 この国のかたち 第2集 “武士”700年の遺産
司馬遼太郎思索紀行 この国のかたち 第1集 “島国”ニッポンの叡智
CYBER SHOCK~狙われる日本の機密情報~
史上最悪の感染拡大~エボラ 闘いの記録~
ママたちが非常事態!?~最新科学で迫るニッポンの子育て~
新・映像の世紀・第4集 世界は秘密と嘘に覆われた
シリーズ東日本大震災 原発事故5年 ゼロからの“町再建”~福島 楢葉町の苦闘~
震度7 何が生死を分けたのか~埋もれたデータ 21年目の真実~
シリーズ 激動の世界・第3回 揺れる“超大国”~アメリカはどこへ~
シリーズ 激動の世界・第2回 大国復活の野望~ロシア・プーチンの賭け~
シリーズ 激動の世界・第1回 テロと難民~EU共同体の分断~
新・映像の世紀・第3集 時代は独裁者を求めた
自衛隊はどう変わるのか~安保法施行まで3か月~
未解決事件 追跡プロジェクト~埋もれた情報 動き出した事件~
調査報告 介護危機 急増“無届け介護ハウス”
いのち~瀬戸内寂聴 密着500日~
シリーズ東日本大震災 追跡 原発事故のゴミ
パリ同時テロ事件の衝撃
シリーズ認知症革命・第2回 最後まで、その人らしく
シリーズ認知症革命・第1回 ついにわかった!予防への道
アジア巨大遺跡・第4集 縄文 奇跡の大集落~1万年 持続の秘密~
アジア巨大遺跡・第3集 地下に眠る皇帝の野望 ~中国 始皇帝陵と兵馬俑~
盗まれた最高機密~原爆・スパイ戦の真実~
シリーズ東日本大震災 “津波の海”を潜る~三陸・破壊と回復の5年間~
アジア巨大遺跡・第2集 黄金の仏塔 祈りの都~ミャンマー バガン遺跡~
アジア巨大遺跡・第1集 密林に消えた謎の大都市~カンボジア アンコール遺跡群~
“ジョーズ”の謎に挑む~追跡!巨大ザメ~
私が愛する日本人へ~ドナルド・キーン 文豪との70年~
巨大災害 MEGA DISASTERⅡ 日本に迫る脅威 第3集 火山列島 地下に潜むリスク
作家 山崎豊子 ~戦争と人間を見つめて~
老衰死~穏やかな最期を迎えるには~
緊急報告 列島大水害
巨大災害 MEGA DISASTERⅡ 日本に迫る脅威 第2集 大避難~命をつなぐシナリオ~
巨大災害 MEGA DISASTERⅡ 日本に迫る脅威 第1集 極端化する気象~海と大気の大変動~
老人漂流社会~親子共倒れを防げ~
新島誕生 西之島~大地創成の謎に迫る~
“終戦”知られざる7日間~“戦後”はこうして始まった~
カラーでみる太平洋戦争~3年8か月・日本人の記録~
女たちの太平洋戦争~従軍看護婦 激戦地の記録~
アニメドキュメント あの日、僕らは戦場で~少年兵の告白~
“あの子”を訪ねて ~長崎・山里小 被爆児童の70年~
特攻~なぜ拡大したのか~
憎しみはこうして激化した~戦争とプロパガンダ~
きのこ雲の下で何が起きていたのか
密室の戦争~発掘・日本人捕虜の肉声~
日航ジャンボ機事故 空白の16時間~“墜落の夜”30年目の真実~
生命大躍進 第3集・ついに“知性”が生まれた
生命大躍進 第2集・こうして“母の愛”が生まれた
生命大躍進 第1集・そして“目”が生まれた

Viewing all articles
Browse latest Browse all 513

Trending Articles