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【NHKスペシャル】見えない“貧困”~未来を奪われる子どもたち~

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【NHKスペシャル】
「見えない“貧困”~未来を奪われる子どもたち~」

(NHK総合・2017/2/12放送)
※公式サイト:http://www6.nhk.or.jp/special/

<感想>

 以前、NHKが相対的貧困状態にある子どもの実態を取り上げた番組に対して片山さつきとかいう政治屋が難癖をつけたことがありました。「貧困ソムリエ」という造語もできましたね。片山ほど卑しい俗物までいかなくても「こんなの本物の貧困ではない」「これは本人の金の使い方が悪い」「家族が生活設計してないのが悪い」など揚げ足を取り、問題の本質が分かっていない声も散見します。

 今回のNHKスペシャルはそうしたバッシングを極力回避しつつ、出て来る用語のきちんとした解説、取り上げた家庭のケースを詳細に伝えるなど丁寧なつくりになっていて実態がリアルに伝わってきました。高橋みなみさんの実体験の告白も大変鋭い問題提起になっていたと思います。

 今の日本社会の現実の姿をみるにつけ、これから結婚して子どもを持とうという気持ちを積極的に抱けない人が増えているのも頷けます。私も配偶者はいますが、子どもは持たないと決めています。老いたときのリスクは極めて高いのですが、覚悟のうえです。少子高齢化を進める側に立っているのは承知しています。社会に対して申し訳ありませんが、考えを改めるつもりはありません。

 ただそういう考えに至った過程についていえば、社会の隅々にまで蔓延した「自己責任」「自助努力」という風潮があります。子どもを持っても自分に何かあったときのことを考えると不安で仕方ないですね。社会は決して助けてくれないと思っていますから。

 これを広めたのは2000年代初頭の小泉・竹中などの新自由主義者たちにほかなりません。雇用の不安定化、福祉の切り捨てなどによってセーフティネットは穴ぼこだらけになりました。そのうえ人々の間に広がったのは「助け合いの精神」ではなく「分断と対立」です。ごくごく一部の不正受給者を槍玉に挙げて、生活保護受給者全体に対して見下すようなバッシングが起きているのが最たるものです。

 子どもが親の懐具合を心配し、進学するにあたって学費のことを心配しなければならないような社会は異常を通り越して狂っていますよ。内乱か戦争でも起こっている国なのかと言いたい。高橋みなみさんが仰った「『子どもが子どもとして生きる権利』『親が親として生きる権利』を守るのは国だ」という言葉は、まさに正鵠を射ていると思います。

 今すぐ出来ることは「奨学金」という言葉に値しない「教育ローン」を返済不要のものを拡大する、高い学費を下げる、児童扶養手当の増額などたくさんあります。将来への投資と考え国がきっちり予算をつければ即可能です。さらに中長期的な対策として雇用の不安定化の解消、社会保障の充実などセーフティネットをきちんと確立させていき、社会的に蔓延した過度の「自己責任論」を克服して「共助」の精神を広げていくことです。

 若者たちも18歳になれば、選挙という社会を動かすための直接的な行動ができます。どこがいい誰がいいと断定できる人や政党はなかなかありませんが、それでも自分の目や耳で見極めて行動してほしいと思いますね。大人も然りです。「自分は関係ない」と思っている人も自分を守ってくれる社会(会社)などないと思った方がいい。油断しているとある日突然、下層に叩き落されますよ。そのときに途中で掴める網(セーフティネット)がなければ底までまっしぐら。それまで一生懸命に税金を納めてきたのに「自己責任」と割り切れますか?

<視聴メモ・番組内容(いわゆるネタバレ)が含まれています>

・タレント・歌手の高橋みなみ氏(以下、高橋氏):NHKスペシャル、今日のテーマは「見えない貧困」です。
・鎌田靖解説委員(以下、鎌田氏):徹底して、見えない貧困を解き明かします。

・今、子どもたちに見えない貧困が広がっている。千葉県内の公立高校。一見、どこにでもいる生徒たち。しかし生徒にアンケート調査を行ったところ、教師たちにも見えていなかった実態が浮かび上がってきた。アルバイトをしている生徒の半数以上が、その理由を「生活費のため」と答えた。
・ある高校2年生の女性生徒もその一人。非正規の仕事をする母親を助けるために、2つのアルバイトを掛け持ちしている。平日は4時間、休日は8時間、働きづめの日々だ。

ちゃんと自分で稼いで、少しでもお母さんが楽になればいいなって(女子生徒)

・スマートフォンを手に、着飾って街を行き交う子どもたち。今、日本ではこの中の6人に1人が貧困状態に置かれている。しかし子どもたちが具体的にどのような困難に直面しているのか、殆ど分かっていなかった。今、各地の自治体では貧困状態にある家庭の中の細かい状況まで聞き取る、これまでにない調査を始めている。
・小学5年生の女の子。小学生になってからお下がりばかりで新しい服を買ってもらったことがない。働く母親に代わって毎日、家事をしている。

お母さんが忙しいから、さみしい(女子児童)

・中学3年生の男子生徒。塾や習い事に通えず、高校進学後に部活動を続けることも諦めたという。

お母さんがどんだけ頑張っても収入とか大体分かってるってのもありますし、自分も我慢できることなら我慢せなあかんなって(男子生徒)

・調査からは、子どもが当たり前に持っているはずの物、人との繋がり、教育の機会などが奪われていることが分かった。私たちは、子どもたちの未来のために何をしなければならないのか考えていく。

<子どもの6人に1人が「相対的貧困」に置かれている>
・鎌田氏:日本の子どもの6人に1人が貧困状態にあるとよく言われるんですけども、実は具体的にどんな状態に置かれているかっていうのは分かっていない。つまり見えてこなかったんですよね。今、実は言われている貧困というのは「相対的貧困」ということなんですが、これ聞いたことありますか?

・高橋氏:聞いたことなかったですね。この相対的貧困というのは、どんなものなんでしょう?

・鎌田氏:その人が暮らしている社会の普通の生活水準と比較して下回っている状態のことを言うんですよね。その水準というのは、国ですとか地域ですとか、あるいは時代によっても異なるので、だから絶対的ではなくて相対的ということなんですね。
 具体的にこれどんな数字化といいますと、収入(可処分所得)の少ない人から収入の多い人まで並べていって、真ん中の人(中央値)の収入を基準にして半分より以下の人が貧困層ということです(16.3%・国民生活基礎調査・2012年)

・高橋氏:6人に1人ですか。

・鎌田氏:日本の場合には6人に1人が貧困状態にあるということなんです。

・高橋氏:これ年収だとどれぐらいになるんですかね?

・鎌田氏:実際の金額にすると基準となる1人世帯の場合には122万円。そして両親と子ども2人の場合には244万円というのが基準です。月収すると20万円以下だと貧困状態だということなんです。

・高橋氏:20万円というふうに聞くと、ギリギリどうにか生活できるんでしゃないかなというのも少し思ってしまうんですけども。

・鎌田氏:そうですね、そう思いますよね。ただ困っている人というのは現実にいるわけなんですよね。だからこそ、これ「見えない貧困」というふうにいわれているということなんですね。しっかりこれを調査して、子どもたちが具体的に何に困っているのか可視化しよう。つまり見えなかったものを見えるようにしようという実態調査が、全国の自治体で今年度始めて行われている大規模な調査。

・高橋氏:これは大事ですよね。

・鎌田氏:そうなんですよね。国の補助金で行われているものだけに限ってみても62の自治体で調査が行われて今、次々に結果が分かってきているということなんですね。その中でも最も規模の大きい調査を行っているのが、大阪府なんですね。

<大規模調査 見えてきた実態>
・今年1月、大阪で実態調査の中間報告が行われた。

非常に困っている世帯の方が声を上げられているかというところが、非常にやっぱり大事だろうと思います(調査を行った専門家)

・回答したのは全市町村の小中学生と保護者、約5万世帯。全国最大規模の調査だ。世帯の手取収入の中央値の半分未満、相対的貧困にあたる「困窮度1」の世帯は今回の調査では12.3%に上った。
・この調査では、生活の実態を明らかにするために「剥奪指標」という新たな指標が使われた。経済状況が標準的な家庭と比べ、貧困状態に置かれた子どもたちは何を奪われているのか調べた。

一番しんどい層の人たちがどれぐらい支援に届いていないのか。どこに重点的に(支援を)手厚くしていかないといけないのか。すごく子どもの姿が見えてくると思う(大阪府立大学の山野則子教授)

・約200の質問項目から剥奪状況を調査。見えない貧困の実態が初めて浮かび上がってきた。「病院に行かせることができない」という指標では標準的な世帯が0.6%に対し、困窮度1の家庭は7.7%。困窮度1の家庭が高くなっていた。
・関西地方に暮らす母子家庭の4人家族。高校生の長女(18)、中学生の長男(15)、小学生の次女(11)そして母親の陽子さん(仮名)。
・週に5日、病院でパートをしている陽子さんの収入は月におよそ14万円、児童扶養手当などを含めても(収入約20万円で)相対的貧困の状態だ。家賃や光熱費などを引くと殆ど手元に残らない。
・一見、不自由なく見える暮らし。しかし家具や家電、ピアノなど殆どが譲ってもらったものだという。

サッカーしよったらビリって(彰くん)

・中学3年生の彰くん(仮名)が持っている運動靴は一足のみ。

お姉ちゃんが中学校のときに使ってたやつで、女子のなんでボタンの方向が違う。みんな気づきませんし、全然大丈夫なんですけど(同上)

・中学校の制服は3年間、姉のお下がりで通した。「子どもに新しい服や靴を買えない」という家庭は困窮度1で27.6%。
・その一方「スマートフォンやタブレット機器(がある)」は困窮度1の家庭の子どもの61.5%が持っていて、標準的な家庭を上回っていた。高校3年生の姉の舞さん(仮名)は、中学3年生のときからスマートフォンを渡されている。
・陽子さんはパートの仕事で殆ど家にいない。スマートフォンは、母親が子どもの安全を確認するためのライフラインになっているという。

連絡手段とか。やっぱり月々(料金)で言ったらお母さんのと2人分だから大変とは(お母さんが)言ってました(舞さん)

・調査からはある傾向が浮かび上がった。「ゲーム機がない」「自転車がない」「テレビがない」。子ども同士の付き合いやコミュニケーションに欠かせないものについては、殆ど違いはなかった。その一方で、彰くんは本を殆ど買ってもらったことがない。

僕のお母さんのお兄ちゃんが子どものときに使っていたやつで、動物とか好きやったんでそれで貰って。おじさんが子どもの時だから40年とかそれぐらい前なんで(彰くん)

・子どもの知識を深めるために必要な本。困窮度1では29%が「本がない(教科書やマンガは除く)」と回答した。
・更に部活動で使う運動用具。これも28.3%の家庭が「運動用具がない」と回答。彰くんは中学校の3年間、バスケットボール部でキャプテンとして活躍してきた。しかし高校で続けることは諦めた。

正直入りたかったんですけど、家のこと見たらしかたないかなって。かといってお母さんがちゃんと仕事をしていないとかじゃなくて、やってくれてるんで、それは自分も我慢できることなら我慢せなあかんなって(同上)

申し訳ないっていうのが大きいんですけど、やっぱり金銭面で気を使わせているのは子どもなのに大人にしちゃっているので(母の陽子さん)

・彰くんは家庭の経済的な事情を友達に話したことはないと言う。

難しいんですけど、なんか人より劣ってるっていう言い方はたぶん変なんですけど、やっぱあの、友達みたいに欲しいもんすぐ買ってもらえんかったりとか、やっぱそんなん(家の事情)はあんまり言いたくないですね(彰くん)

・小学5年生のなつみさん(仮名)。放課後、同級生と遊ぶこともなく、すぐに家に帰る。朝早くから夜遅くまで働く母親に代わって家事をするためだ。家族4人分の洗濯。しかしなつみさんは小学校に入ってから、新しい服を買ってもらったことはない。

お母さんが忙しいから。朝の7時半に出て6時半か7時に帰ってくる。けっこうさみしい(なつみさん)

<大規模調査 “繋がり”の剥奪>
・今回の調査では、子どもたちから奪われているのが物だけではないことが分かってきた。人との繋がりの剥奪だ。家族や人との繋がりは、子どもたちがこの社会で生きていくために必要な土台だ。
「学校から帰っても家に親がいない」子どもは標準的な家庭が37.7%に対し、相対的貧困にあたる困窮度1の家庭で50.1%。親子の大切な思い出になる「家族旅行ができなかった」と答えた世帯は困窮度1で46.2%に上る。
・なつみさんの母親が帰ってくるのは夜7時頃。それまで兄の小学6年生の大樹くん(仮名)と子どもだけの時間が続く。母親の真弓さん(仮名)は日中の仕事と宿直の仕事を掛け持ちして、子どもたちを育てている。真弓さんの仕事は手当を入れて月に約20万円。

私の帰ってくるまでの時間が長いから、何かなかったり何かせんかったら、やっぱりおれないんでね(真弓さん)

~お母さんへ~
アイロン■があしたかけるからやらなくていいよ。


・大樹くんが書いてくれた置き手紙を写真に撮って、いつも持ち歩いている。戸建ての住宅は亡くなった父親が買ったもの。病気の母親への仕送りもしているため、1日の食費を家族全員で1000円ほどに抑えている。

(お母さんの料理で何が一番好きなの?)
お好み焼きとオムレツ。3センチぐらいの太さのオムレツ(なつみさん)

・お金や時間を家族旅行に使う余裕もない。

うちは(家族旅行に)行ったことがない。一度も行ったことがないです。(子どもたちが)行ってきたってお土産もらうんですよ。お土産がやっぱり返せなくてね。貰うばっかりで毎回いろんな人から貰うけど、私は全然返せないって言って。夏場も海に行きたいってすごく言われたんですけど、休みが取れないのとお金がないのと、行けなくてそれで(真弓さん)

<大規模調査 “教育・経験”の剥奪>
・外からは見えにくい物や人との繋がりの剥奪。最も深刻なのが子どもの成長にとって不可欠な教育や経験の剥奪だ。困窮度1で「学習塾に通わせられなかった」「習い事に通わせられなかった」家庭はそれぞれ30%以上(学習塾35.7%、習い事31.1%)。
・更には「誕生日を祝えなかった」「学校行事などに参加できなかった」家庭も標準世帯の10倍以上(誕生日6.6%、学校行事7.3%)。子どもにとって、ごく普通の経験も失われていることが分かってきた。
・なつみさんたちも塾や習い事に通いたいと考えている。しかし母親の真弓さんは、子どもの将来について考える余裕はないと言う。

下の子はプール習いたい。プールとそろばんと習字習いたいって言ってるけど、やっぱりね月1つの習い事で5000円。行くのに交通費かかったら大きいんですよ。お米が買えたりするなあとか思ったり(真弓さん)

・夜9時、真弓さんが再び宿直の仕事に出かける時間。母親が帰るのは翌朝7時。この日も子どもたちだけで眠りにつく。大規模調査から見えてきたのは、子どもたちの未来が奪われかねない現実だった。

<有識者・専門家はどうみるか>
・高橋氏:見えない貧困は、見えないようにしているんですよね。私自身も母子家庭なので、すごく分かることがたくさんあったんですけども。本当に子どもながらに我慢を知らない間に覚えてしまうんですよ。
 中学校に行く前に中学校の運動会に行くと、前の子が使っていた制服も売ってるんですよね安く。そこで手に入れて入学式の時に着ていくんですけど、やっぱりブレザーとかもここの名前の刺繍が違ったりとかするんですけど。まあ、開かなければ見えない。ちょっと肩幅広くてもバレないっていう我慢を覚えてしまうっていうの、すごく今ふと思い出しました。

※大阪「子どもの生活に関する実態調査」
「新しい服や靴を買えなかった」困窮度1で27.6%。

お母さんも言ってらしたんだけれども、仕事の厳しさ。それからお金がないこと、それから時間のなさね。この3つというのはとてもよく重なっているというふうに的確に表現されていたんだけれども、そういう親たちが日々暮らしをしていると、子どもに言葉がけをしたり「お前はかわいい子で頑張れよ」っていうような余裕って失うんですよね。その辺りのところは、貧困という問題の奥深さといいますかね。単にお金がないという問題でない重要なポイントではないかと思いますよね(内閣府 子どもの貧困対策 有識者会議座長の宮本みち子氏)

※大阪「子どもの生活に関する実態調査」
「学習塾に通わせることができなかった」困窮度1で35.7%。
「誕生日を祝えなかった」困窮度1で6.6%。

・大阪の実態調査でも人との繋がりや教育の機会を失うことで、子どもたちが健全に成長する環境が剥奪されることが分かってきた。経済的な側面にとどまらない貧困問題の根深さだ。

・鎌田氏:今の調査で多分具体的に貧困状態に置かれた子どもの状況というの分かってきたような気もするんですけれども。

実は私も小学校6年生のときに母親を亡くしていて、父子家庭で育ったんですね。今思うとお父さんやお母さんや、そういった親や大人と一緒に過ごしたかった夜の時間が一人で過ごさなきゃいけない(貧困の子どもを支援する団体 事務局長の村尾政樹氏)

※大阪「子どもの生活に関する実態調査」
「学校から帰っても家に親がいない」困窮度1で50.1%。

・高橋氏:そうですね。本当にお母さんだったりお父さん、頑張ってくれてることは子どもながらにすごく分かるので、何か甘えちゃいけないなとか、一緒にいてほしいっていうのを言っちゃいけないなというのを子どもながらに悟っちゃうんですよね。

・鎌田氏:こうした子どもたちの支援を進めようと実態調査を行ってきたのが東京の大田区なんです。その調査結果からは、当たり前の権利が奪われることによって子どもの精神面にも深刻な影響を及ぼしているということが分かってきました。

<子どもの心にも及ぼす影響>
・大田区では区立小学校に通う全ての5年生と、その保護者を対象に剥奪指標を用いた調査を実施。約3500世帯から回答を得た。子どもが当たり前に持っているはずの物や経験14項目を選び、経済的理由で3つ以上剥奪されている世帯を支援の対象とした。
・更に剥奪で子どもの心にどのような影響を及ぼすかも詳しく調べた。区が支援が必要だとした世帯は21%に上った。中には相対的貧困にはあたらない子どもも含まれていた。

世帯収入だけではなくて生活のしがたさという声をきちんと受け止めていくことが必要。そこをスタート地点として私たちに何ができるか考えていきたい(大田区福祉部 子ども貧困対策担当の石川里香副参事)

・調査に答えた親子。小学5年生の修くん(仮名)、両親はどちらも非正規の仕事をしている。14項目の剥奪指標のうち「毎年新しい洋服・靴を買う」「毎月おこづかいを渡す」「年に1回家族旅行に行く」「自宅で宿題をする場所がある」の4つが出来ないと回答した。
・物流倉庫で夜勤の仕事をしている夫は腎臓の病気で入院を余儀無くされることもある。そのため仕事ができず収入が夫婦合わせて20万円程度の月もあり、不安定な生活だ。
・医療費がかさみ、借金せざるをえないときもあった。国民健康保険の保険料も滞納している。

仕事のことと家事育児のことと余裕がなくてイライラしたりとか、経済的なゆとりと時間的なゆとりがないというのが直結してるのが原因とは感じます(修くんの親)

・子どもの心の調査からは、物や経験などの剥奪が子どもから自己肯定感を失わせていることが明らかになった。「頑張れば報われるかと思うか?」という質問に対し、区が支援が必要だとした子どものうち23.7%が「そう思わない」と答えた。
・更に「自分は価値がある人間だと思うか?」については、46.8%が「そう思わない」と答えた。
・修くんは忙しい両親に遠慮して、自分のしたいことや言いたいことを我慢することが多いという。

時間を作って欲しいのはありますけど、それが無理なので。それが分かってるのでどうしても言えなくて。(お母さんは)ものすごく大変そうだな。帰ってきたときにイライラしてると、今日は忙しかったんだなって(修くん)

「頑張れば報われる」「自分は価値のある人間だと思うか」という問いには「そう思わない」と答えた。

どうしても自信が持てないので、なぜか。自分の将来は楽しみじゃないって答えました。お母さんが色々疲れたり、お父さんがいつも疲れて帰ってきたり、大人になるのは大変だな。もしも無事に大人になれても、大人になったあとも大変だと思うので(同上)

<雇用環境の悪化も原因のひとつに>
・高橋氏:いやー、苦しいですね。自分の将来が楽しみとはなかなか言えないなっていうふうに、子どもが思わず言ってしまうっていう。本当にインタビューに答えたお子さんが、すごく発言が大人びてましたよね。もっと子どもらしくいていいんですけども、どうしてもやっぱり親が苦しい状態にあると、何で自分はお父さんとかお母さんの力になってあげれないんだろうっていう苦しさが、すごくあるなっていうのは思いましたね。私もやっぱり母がそうなったときに、早く家庭にお金を入れたいって思いましたけど、それは難しい。じゃあどうしたらいいのか分からないっていう。未来をもうちょっとね希望あるものにするためにはやっぱりある程度、環境も必要じゃないですか。夢を見れる環境が必要なんですけど、今のVTR見てるとそこがやっぱりちょっと足りないというか、苦しい状況だなと思いましたね。

※大田区「子どもの生活実態調査」
「頑張れば報われると思うか?」
→支援が必要な子どもの23.7%が「あまり思わない・思わない」と回答。

就職氷河期といわれた世代がいますが、そこがまた今、親御さんの世代になっているという中で、やはりもう自助努力とか自分で頑張んなきゃいけないっていう価値観、この日本の中ですごく強いですけれども、自助努力の限界だと私はつくづく本当に思います。これはもう個人の頑張りを超えていますね。非正規で稼ごうと思ったら、夜間の方が時給は高い。でもそれは子どものために頑張っているのに、子どもと過ごす時間、子どもをケアする時間が奪われるっていう負のスパイラルに置かれると、保護者の方も経済的なストレスってすごくあると思うんです(立教大学教授/自治体の貧困調査を分析 湯澤直美氏)

・鎌田氏:親の余裕のなさというのが来てるということが分かったんですけども、実は親世代の状況を生み出しているのが雇用関係、雇用環境の悪化といいますか、よくないということだと思うんです。平均給与を見てみますと、ここ数年は回復傾向にはあるんですけれどもそれでも420万円前後で推移していると。

従来は基本的に大企業正社員が給料を貰うとそこに全部、付加給付(企業が支払う賃金以外の手当)といいますか住宅手当もあり、配偶者手当、家族手当があり、医療保険制度も全部あると。だからそれで家族がもち、子どもがちゃんと教育を受けられたんですけども。今後はたとえ非正規雇用であろうともですね、今のような全くの無権利状態、裸の状態のまま放り出されるようなことはあってはならないと(宮本氏)

・鎌田氏:夫婦と子ども1人の世帯で見た場合ですが、子どもにかかる費用は小学校、中学校と高くなって高校生になると月平均およそ8万円くらいになるわけなんですね。こうした負担を全て親に頼れずに高校生がアルバイトで家計を支えているという、こういう実態が分かってきました。私たちは千葉県の高校で行われた調査に注目しました。

※子どもの教育関係費【月額】
(制服代・給食費・通学定期代・クラブ活動費)
・小学生:1万6020円
・中学生:5万6377円
・高校生:7万9795円
(総務省「全国消費実態調査」2014)

<高校生アルバイト調査 家計を支える実態>
・千葉県内の16校が生徒のアルバイトの実態について行ったアンケート調査、2515人から回答があった。アンケートからは、高校生がアルバイトで家計を支えている実態が見えてきた。アルバイトをしている人のうち、週4日以上働いている人は44%、平日4時間以上働いている人も46%に及んでいる。
・調査を分析した首都大学東京の阿部彩教授。アルバイトの収入があることで、高校生の生活の厳しさが見えにくくなっていると指摘する。

高校生というのは今は若者に移行していく時期であり、アルバイトですとか大人の世界に半分入りかけている年代かというふうに思うんですけど、社会に送り出すという態勢ができていないと、これは貧困の再生産につながりますので(阿部氏)

・学校では友達と明るく過ごし、悩みがないように見える高校2年生の理恵さん(仮名)。アンケートの自由記述欄には「働く事が多くて、少ししんどいです」と書いていた。高校入学と同時にアルバイトを始めた理恵さん、休日は朝7時から働く。休日は1日8時間、平日は4時間働く。
・シングルマザーの母親の収入は、手当も含めておよそ月18万円。理恵さんはそれには頼らず、自分で生活費を賄っている。アルバイト代は月におよそ7万円。生活費や通学費用、さらに進学のための積み立てに充てている。理恵さんの収入を合わせると、世帯収入は25万円近く。アルバイト代が家計の支えになっている。
・高校のアンケート調査で働く目的を聞いたところ「生活費のため」(携帯代や食費、衣服など)と答えた人が51%。更に「進学費用のため」が18%に上った。
・ファミリーレストランでの仕事を終えると、すぐに次のアルバイト先へ向かう。コンビニのアルバイトを掛け持ちしているのだ。

ちゃんと自分で稼いで、少しでもお母さんが楽になればいいなと(理恵さん)
(このあとは?)
帰って風呂入って寝ます。ほんとにすぐ、ばたんと倒れちゃうくらい(同上)

・働きづめの週末が終わり、迎えた月曜日。疲れがたまり学校を休むことも増えた。アルバイトをしている生徒のうち「学校をやめたくなるほど悩んだことがある」と回答した人は31%に上っている。

朝から学校に行くのがしんどくなって、みんなにも気をつかうし。学校を休むくらいなら行かなくてもいいじゃないかと悩んだ時期もあったんですけど。やっぱり学校をやめたら今ここでやめたら、この先何もできなくなるかもしれないし(同上)

・理恵さんの担任は今回のアンケート調査を行うまで、生徒たちの実情は分からなかったと言う。

ふだんの学校生活の中では外見上同じですし、スマホなんかみんな持っていますし。日常の生徒の生活の中から、生活に困っているという雰囲気を感じさせることは殆どない(理恵さんの担任)

・間もなく高校3年生になる理恵さん、今の一番の悩みが進路の選択だ。理恵さんは専門学校や大学に進学したいとアルバイト代を貯めている。しかしその貯金だけでは進学することはできないと言う。

就職だとそんな学費もかからないから、本当はお母さんは就職だと嬉しい感じだと思う。自分がもし就職しないで専門学校に行くというと驚くと思うし。「そんなお金ない」と言われそうだなと、そういう面では怖い気持ちはありますね(理恵さん)

<進学のために…高校生に重い負担>
・アンケートでは「進学費用をどう払うか」という質問に対し、親が全てを払えずアルバイト代や奨学金で賄うという人が半数を超えた(親45%、一部自分40%、全て自分15%)。
・今、2人に1人が奨学金を借りて大学に進学している。奨学金の借り方や返済の仕方まで教える高校もある。

大きなお金を借りている、借金であることは踏まえておいてもらいたいなと思います。

・大学進学を目指している高校3年生の真央さん(仮名)。英語の教師になりたい真央さん、成績は学年トップクラス。真央さんは両親と3人暮らし。高齢の父親は定年退職しているが、年金があるため相対的貧困にはあたらない。しかし住宅ローンの返済などで余裕がない。
・パート収入で家計をやりくりしている母親に負担はかけられないと思っている。進学費用は親に頼らず、奨学金を借りることにした。

無利子なのと二種の有利子なんで、合わせて12万円。月12万円です。嫌やけどまあ、しかたないですよね。自分の夢なんで。かなえるために借りているんで(真央さん)

・しかし奨学金を借りても進学が危ぶまれる事態に直面していた。受験まで2か月を切ったこの日、真央さんは進路を相談するために先生を訪ねた。
・このとき問題となったのが、入学金など78万円。奨学金の支給が始まる前に払わなければならない。真央さんは教育ローンを借りるしかないと説明された。

ここでもう借りられたら、全然本当に心配いらんねん。もちろん親戚に借りられたらそれはいいかもしれへんねんけど、もしも借りられなかったら、本当にお金なかったら…(奨学金担当の教員)

受かっても…(真央さん)

そやねん。それを心配しているだけやねん。いけるかな?しんどいね。高校生やもんな、まだ(教員)

しんど…嫌や、もう嫌や(真央さん


(面談後、教員が話す)
本当やったら今からもう合格を目指して頑張るっていう時期ですよね。何かこう追い込んだみたいで、ちょっと罪悪感を持ってしまうというか(教員)

(帰宅後、真央さんが話す)
金降ってこーい。(パンフレット表紙に写っている笑顔の高校生の写真を見ながら)何笑ってんねん。夢ちりばめている感じするけど。笑っている場合じゃないんですよ、これを借りるってことは。合格は頑張ればできるけど、行くのは自分が頑張っても難しいですよね。なかなかしんどい(真央さん)

・今、社会への入口で子どもたちが大きな負担を背負わされている現実が見えてきた。

<子どもの貧困の実態をどうすればいいのか>
・鎌田氏:世代的にも近いわけで、高橋さんどうご覧になりました?

・高橋氏:その先々の返済できるのか、どうなのかも不透明なところに「やります」「お金借ります」っていうジャッジを求められるっていうのは、かなり厳しいなっていうのはすごく思いました。

・鎌田氏:子どもの相対的貧困というのを仮に放置したりした場合ですけど、こんな数字があります。そうなると進学率が下がっていって、そうすると非正規雇用にしか就けなくなる。そうすると多くの人たちの収入が減っていくわけですから結果的に42.9兆円という社会的損失になるという試算も出ているんですよね(日本財団試算)。

・高橋氏:すごい数ですよね。数値ですね。

・鎌田氏:このまま放置していると、こういうことになるおそれがあるという。

・高橋氏:本当にだから一人一人の問題っていうよりも、社会で本当に考えていかなければいけない問題ですね。

・鎌田氏:大事なのは、この実態調査をきちんと分析してそれを対策に生かすということが大事ですよね。

自治体でできること、自治体だからこそできること。早期予防とか発見とかそういうこともありますが、国でなければできないことというのは明確にありますから。そこで税制や社会保障や雇用の問題もそうですし、そこを何も手付かずで子どもの貧困対策というふうになったときには、やはり傷ができた所に絆創膏を貼るというようなことで終わってしまうという側面もありますから、両輪で進めていかなきゃいけない(湯澤氏)

親がどうであれ、どんな子であれ教育保障ということが、この社会をもたせるためには重要だということをみんなが感じること。そして社会資源をそのために投入するという合意にたってですね、やるということをぜひここで力を入れる段階にあるんだと思いますよね(宮本氏)

・高橋氏:村尾さん、若者の一人としてもこういう実態を放置せずに改善するにはどうしたらいいっていうふうに思いますか?

よく、やっぱり今、自立が大事だと。本当に大事だと思うんですけど、でも僕そういうふうに今の子どもたちの置かれている環境って、自立じゃなくて孤立を生み出していくんじゃないのかなっていうのをすごく感じますよね。声を上げられない(村尾氏)

・鎌田氏:助けを求めない。じゃあ実際に子どもが声を上げようとすると、例えばネット上でバッシングを受けたりするということが…。

しんどいってことを言ってることに対して、やっぱり寄り添うっていうのか大事にしていってほしい。子どもたちの声をやっぱりつぶさないってことが大事なのかなっていうふうに(村尾氏)

・鎌田氏:私10年以上、貧困をテーマにした番組にずっと関わってきたことがあるんですけど、子どもの貧困をそのままにしていくと次の将来、未来にわたる貧困とも関わってくるわけですから、その意味ではここを突破口にして貧困の問題全体を俯瞰して考えるというところまでトータルに考えるという、こういうことが重要なんじゃないかという気がしますけどね。

・高橋氏:そうですね、世間の一般的に見ると、どうしても手を挙げて厳しいですっていうところに国自体も目を向けて助けようと…目に見えるものを助けようとしますけど、やはり声を上げれず苦しんでる人たちもいるんだというのを改めて感じました。「子どもが子どもとして生きる権利」「親が親として生きる権利」が確実にあるんじゃないかと。そしてそれを守るのは国なんじゃないかなというふうに思いました。この番組を本当に一人でも多くの方に見ていただいて、何か感じていただけれたら嬉しいなっていうふうに思います。

<子どもたちの声を大人はどう聞くのか>
・今回の取材で出会った子どもたちの声。

同じ高校生でも見ている世界や将来の夢は様々です。しかしその100通りの違いが格差であってはいけない(女子・親友が経済的理由で夢を断念)

本当にやりたいことが奪われるのってどうなんだろう。すごい不安になる。学費の問題で苦しんだりだとか、本当に相続したくなくなってくるぐらい怖い(男子)

兄と自分とお母さんで、みんなで泣きながら寝たりした日々、送ってたんですけど。自分がそんな立場だからこそ社会に訴えて、貧困問題とかも自分から自ら取り組んで、こんな社会、こんなクソみたいな社会、変えてやりたいって思ってて(女子)

オリンピックとか高齢化とか、そんなところは目が行くのに、実際支えていく、こういう高校生とかが苦しい現状にちゃんと目が行ってますかって。もっと見てほしい(女子)

(2017/2/14視聴・2017/2/14記)

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