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【NHKスペシャル】シリーズ東日本大震災 “26兆円” 復興はどこまで進んだか

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【NHKスペシャル】
「シリーズ東日本大震災 “26兆円” 復興はどこまで進んだか」

(NHK総合・2016/3/12放送)
※公式サイト:http://www6.nhk.or.jp/special/

<感想>

 26兆円もの予算を使った復興予算の検証という番組でした。上手くいっているもの、なかなか上手くいっていないものがみえてきましたが、検証というにはもう少し掘り下げてもよかったのはないかと思いましたね。

 例えば、復興公営住宅の建設について、未だに多くの人たちが仮設住宅での暮らしを余儀無くされています。待ちきれずに被災地を離れてしまう人がいることは知っていましたが、建設が進まない大きな要因について殆ど触れられていませんでした。2020年に開催が予定されている(本来誘致すべきではなかった)イベントのため、建設資材費・人件費の高騰が原因だと言われています。

 さらにいえば、本来もっと使われるべきところに手当てがされずに厳しい状況となっているところに、もっと目を向けるべきでしょう。NPOの支援については若干触れられていましたが、大上段に構えた割には物足りなさを感じましたね。

<視聴メモ・番組内容(いわゆるネタバレ)が含まれています>

※見出しは当方で付けました。

・死者・行方不明者2万人、町が壊滅した東日本大震災。絶対に安全な町をつくる、国はこの5年間を集中復興期間と位置づけ町を丸ごとつくり変える前例のない復興に取り組んできた。それを支えたのが総額26兆円の復興予算、10兆円の増税などで生み出された。
・復興予算はどの分野にどれだけ使われてきたのか、その詳細は分かっていなかった。NHKは集中復興期間が終わるのを前に、その全体像を掴むことにした。情報公開請求などを行い、国と全自治体の膨大な財務資料を入手。全ての事業を分析した。
・この5年間に行われた事業は約1,500に分類、それぞれの事業を分野ごとに分けた。その結果、インフラ整備・まちづくりの予算(14兆円)、産業の振興・雇用の確保(5兆円)、原子力災害からの復興・再生(3兆6千億円)、被災者支援(2兆5千億円)と詳しい内訳がみえてきた。
・この予算によって暮らしはどこまで再建できたのか、これからの復興をどう進めていけばいいのか、独自の調査をもとに復興予算を検証しその教訓を探る。

<インフラ整備・町づくりはどうだったのか>
宮城県女川町、震災発生直後に訪れたとき建物は流され幾つものビルが横倒しなっていた。津波の凄まじい威力に言葉もなかった。5年が経った今、新しい駅や商店街が完成し町が丸ごと様変わりした光景に驚かされる。
一方、思うように進まない現実もある。被災地ではこの5年、想定をはるかに越える速さで人口減少が進んだ。女川町では37%も減っている。復興を待ちきれずふるさとを後にする人たちも多いのだ。
あのとき津波の猛威を目の当たりにした私たちは一刻も早い被災地の復興を願い、増税も受け入れた。この復興予算26兆円がどのように使われてきたのかを改めて分析することで、何が出来て何が出来なかったのか検証することにした。そこには将来の巨大災害に備えるための教訓や、人口減少など日本全体が抱える課題を解決するヒントが含まれていると考えたからだ。
まずは26兆円のうち14兆円と最も多くを占めるインフラ整備・まちづくりについて。人口が減少する中、当初想定していなかった事態が起きている(鎌田靖キャスター)


・復興予算の中で最も大きいのが総額2兆2870億円の公共土木施設等の災害復旧。被災した防潮堤や道路、漁港などの工事が含まれている。防潮堤の復旧は約300km、84%が着工し工事が本格化している。道路は90%以上が完成している。

復旧はしてると思います。本当に良くなったと思っています(女性)
感謝してます(女性)


・しかし取材を進めると、活用の見通しが十分に立っていないインフラがあることが分かった。5年前、壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町の南部にある折立漁港、町が2億7349万円の復興予算を使って復旧させた。ところが今、港に人の姿は殆ど無い。地元の漁業協同組合を訪ねた。震災前の組合員は43人、震災を機に引退する人が相次ぎ、いま漁をしている人は僅かだという。

(戻ってきたのは)4人です。これだけですよ、海でいま飯を食おうとしている人。あとは全部引きあげていった(漁協関係者)

・宮城県内では復興予算を使って142か所全ての漁港で復旧が進められている。しかし漁業者の数は震災前の9753人から6516人と3分の2に減った。
・なぜ全ての漁港を復旧させることにしたのか。南三陸町では住民が他の地域に移り住み、人口が大幅に減ることを懸念していた。基幹産業の漁業をいち早く立ち直らせることで住民を繋ぎ止めようと考えた。

南三陸町は水産が基幹産業、それぞれの浜で漁業をやっている方がいる。その方々の場所を作ることが復興。生活、なりわいも含めて。スピード感が上がっていくという思いがあった(南三陸町の佐藤仁町長)

・インフラの復旧が迅速に進んだ背景には、60年以上前につくられた災害復旧に関する法律がある。「原形復旧」元に戻す工事であればすぐに着手することが認められている。人口が増えていた時代、大規模な災害が起きてもインフラが復旧すれば町が再生すると考えられていた。
・ところが今回多くの町では急激に人口減少が進んでいる。南三陸町では1万7千人余りいた住民が想定を越えて29%減少した。
・防潮堤の建設現場でも思わぬ事態が起きている。折立地区には震災前130世帯が暮していた。住宅は殆ど流され、町は住民に安全な高台に移転してもらうことにした。一方、防潮堤は元の場所に復旧、住宅の跡地には企業などを誘致しようと考えている。しかし出来ているのは水産加工場など2つの施設、町は当面潮干狩りの駐車場として使うことを検討している。

漁港、防潮堤、道路すべて復旧はすると思う。そのとき町の姿はどういうふうになるのか、そう(何もない状態に)ならないように、どうにかしなければいけないが一抹の不安はあります(南三陸町建設課の三浦孝課長)

・町は将来跡地の活用が進む可能性があるとして、復旧の計画を見直す考えはないとしている。国もその方針を尊重している。

たとえ背後のまちづくりが固まっていなくても、先に防潮堤を進めることが出来る地域であれば、それは一つの復興の進め方だと思う。そういうものについては国としても最大限、支援していきたい(水産庁防災漁村課の米山正樹課長補佐)

<住まいの再建がなかなか進まない地域>
・一方、被災者の生活再建の基本となる住まい、その再建にどれだけ予算が使われているのか調べた。高台への移転や災害公営住宅の建設に1兆7756億円が使われていた。
・町が根こそぎ流された被災地、浸水した沿岸地域の殆どは津波から命を守るため、住宅の再建が制限されている。このため723か所で嵩上げや高台移転、災害公営住宅の建設などが計画された。その全てを取材した結果、工事が思うように進んでいない実態が浮かび上がってきた。
・進捗率が高いのは平野部の仙台市など、工事は殆ど完了している。しかし全体では45%、このうち宮城県気仙沼市は23%に留まっている。
・気仙沼市で建設中の牧沢団地、山を切り崩し260世帯を移転させる高台移転事業だ。当初は今月完成予定だったが1年近く遅れる見込みだ。市が移転を希望する住民の数を把握し整備計画をつくるまでに2年を要した。
・工事が始まっても思わぬ事態が次々と起こった。この日は作業の妨げとなる大きな岩が出てきた。

この石が1個あるたびに3日ずつ工程が延びていく(関係者)

・復興関連の工事が集中している被災地、至る所で起こる渋滞や作業員不足が遅れに拍車を掛けている。
・工事の遅れに住民は翻弄されている。牧沢団地への入居を予定している佐藤則文さん。

(何をしているんですか?)
引っ越しです、仮設から仮設へ(佐藤さん)

・移った先は同じ仮設住宅の別の部屋。89歳の母親を介護するため、広い部屋が必要になったのだ。早く落ち着いた暮らしを取り戻したい、願い続けて5年が経った。

何で未だにこの状態なのという感じ。長いですよ、5年間は(同上)

・工事の遅れなどによって移転を諦める人が相次ぎ、計画を縮小している地区もある。自治体が計画していた戸数は合わせて5万1572、希望者が減り今では4万4370にまで縮小されている。さらに完成した宅地や住宅にも空きが出ている。その数は1422戸分になっている。
・気仙沼市の菅原茂市長、住宅の再建がこれほど遅くなるとは想像していなかった。復興の難しさを感じている。

阪神・淡路大震災の例もあって、3年4年で最終的な住宅再建ができなくてはいけないというイメージがあった。結果的に1~2年余計にかかっている状態だと思いますし、そのことについては大変申し訳ないと思っている。一方で、もう1回やったらもっと時間を縮められるかと言ったら、やはり土地を探すところからやれば一定程度(時間が)かかってしまうことも、このような工事の中ではあり得るということも学んだ(菅原市長)

・なかなか進まない高台へ移転、各地の事業を調べた結果、比較的短期間で実現させた地域があることが分かった。岩手県大船渡市、平地が少なく移転先となるまとまった土地がなかなか見つからなかった。
・そこで注目したのが、市内に点在する小さな空き地だった。使われていない農地などの空き地を宅地にすることにした。“差し込み式”という手法だ。時間がかかる土地探しや地権者との調整は、地元の事情に詳しい住民に協力を求めた。
・こうして進めた結果、この地区では3年足らずで事業が完了した。大規模な造成や新たな道路整備が必要ないため、コストを抑えることにも繋がった。
・NHKは高台移転の1戸当たりの整備費用を地区ごとに調べた。高いところでは5千万円から1億円余りかかっている。一方、大船渡市の差し込み式を導入した地区の多くが1千万円から2千万円台だった。

当時、早く住宅再建ができればいい、被災者の方々にとって。早くやるためにはどうしたらいいのか、こちらも相当意識をした。その方々にとっても満足感が高い。(大船渡市の戸田公明市長)

<当時の復興構想会議の議長は現状をどうみているのか>
震災発生直後、復興の理念を国に提言した復興構想会議、議長を務めた神戸大学名誉教授の五百旗頭眞氏、増税を最初に提案し安全な町づくりを進めるべきだと主張していた。
5年が経った今、被災地の現状をどうみているのか聞いた(鎌田キャスター)


国民が増税を受け入れたことが大きかったと思う。手厚い支援、復興ができるのは国民がサポートしたから。痛みを分かち合ったからだと思う、これは評価するべきだ(五百旗頭氏)

(5年経って現実との間にギャップが出てきているのでは)
多くのことは予定通りだが、想定した以上にすごいのが安全な町をつくるのに大土木工事をして人工の10mの丘をつくって、その上に町や住宅を移すということをやっている。これはちょっと想定していなかった。しっかりと安全な町をつくる、そうすると時間がかかる、スピード感がない。時間がかかる中で多くの人が離れていってしまうのは想定はしていたが、イメージしていたより大きいと思う(同上)

5年前、安全な町を一刻も早くつくることを誰もが願い、その実現のため巨額の費用が投じられてきた。しかしこの5年でみえてきたのは、たとえお金をかけてインフラを整備しても人口減少に歯止めがかからないという厳しい現実だ。一旦決められた計画を状況の変化に合わせて柔軟に見直していくことがいかに難しいか、改めて感じる。
今、被災地が直面している課題は、災害が多発する日本ではどの地域でも決して他人事ではない。これからの時代、人口減少という現実から目を背けずにどのような町の将来像を描いて復興を進めるのか、今から考えておく必要があると感じる(鎌田キャスター)


<「産業の振興と雇用の確保」はどうだったのか>
被災地の人々が生活を再建するために欠かせない産業の振興と雇用の確保。国は過去の災害では例のない手厚い対策を予算に盛り込んだとしている。取材してみると効果があがっているものがある一方で課題も浮かび上がってきた(鎌田キャスター)

・産業振興や雇用の確保のために投入された5兆円、この中に企業に国費を投入するという過去に例のない予算があった。グループ補助金4810億円、地域経済を担う中小企業などのグループなどに対して再建のための資金が交付される。NHKはその交付先の企業を調べた。全部で638のグループ、延べ1万社余りが対象となっていた。この補助金によって企業の業績はどこまで回復したのか。
・今年1月、岩手県大船渡市の建設会社が新年会を開いていた。この会社は津波で本社が全壊、重機6台・トラック9台など建設機械の殆どが流された。
・2年後、同じように被災した建設関連の企業24社でグループをつくり補助金を申請した。この補助金は設備の復旧費用の4分の3までが認められる。この会社は1億5千万円を受け取り、社屋と機械を全て復旧させた。事業の再開後、復興に伴う工事を相次いで受注。今年度の売上は震災前の6倍の30億円を超えた。
・建設業界以外でもグループ補助金の効果が表れている企業がある。あるホテルは震災前から借金があったため一時は再建を断念した。しかしグループ補助金で建物を再建し営業を再開。工事関係の宿泊客が増え、1年先まで部屋の7割に予約が入っている。

(グループ補助金は)復興の大きな支えですよ。(補助金が)無かったら立ち上がれないでしょう、誰も(ホテルの鳥井昭子社長)

・被災した企業の再建を手厚く支援する今回の復興予算、地域の経済にどのような効果を与えているのか。NHKは民間の信用調査会社の協力を得て3つの県の3万5千社の業績データを分析した。
・その結果、61%の企業が売上を増加・回復していることが分かった。しかし業種別にみてみると業績にはバラつきがあった。震災前より売上が伸びた企業が多いのは、土木や建築など復興工事に関連する業種。一方で売上が伸びていない企業が多い業種もあった。食料品や洋服の小売など地域住民の需要に支えられてきた業種だ。

<水産関連の業種は7割が売上が減っている>
・そして被災地の基幹産業・水産関連の業種が7割の企業で震災前より売上が減っている。なぜ業績が低迷しているのか、グループ補助金の中で最大の356億円が認められた水産関連のグループを取材した。
・全国有数の水揚を誇る宮城県石巻市、津波で全壊した魚市場は去年までに復旧した。この市場に関連する水産加工会社など199社でグループをつくった。
・そのうちの1社、ワカメなどの加工販売を行う企業。震災発生の翌年、グループ補助金2億4388万円を使って本社・工場を復旧させた。ところが補助金で購入した機械の半分が稼動していない。社長の保原敬明さん、売上が思ったようには回復せず利益は殆ど出ていないという。

これが(利益の)計画値、なんとか這い上がってきたけども(実際との)幅が大きいでしょう。会社として皆さんの血税を使ってここまでやってきたんだから、早く立ち上がって利益を確保して、納税という形で国民にお返しするのが務めだと思うけどね。ともかく頑張るしかない(保原さん)

・5年前、被災した直後の保原さんの会社は津波で大きな被害を受けたが、被災した設備を元に戻せば必ず経営を立て直せると信じていた。
・しかし期待した通りには進まなかった。震災前から需要の低迷が続いていた石巻市の水産加工業、保原さんの会社は約1年で操業を再開したものの、その間に失った取引先の一部を取り戻すことが出来なかった。

数十年来のお付き合いのところも(取引が)無くなったところもありますし、さみしいですね(同上)

・震災を機に人手の確保も難しくなった。100人いた従業員のうち再建後に戻ってきたのは60人ほど、より給料の高い業界に転職してしまった人もいたという。

最初は震災から立ち上がろうというときだから、バラ色のものを作るよ。だけども今ここに来て、本当はゆっくりじわじわ来る問題が噴火みたいに一気に噴き出しているから。バラ色のものを本当の原色に近い色に書き直していかないといけないよ(同上)

<建設業界も陰りがみえ始めている>
・グループ補助金を足がかりに業績を伸ばした建設業界にも陰りがみえ始めている。前出の大船渡市の建設会社、震災発生から5年が経ち受注した工事の半分が既に終了した。新たに雇った従業員を減らすことも検討している。

厳しい時代が待ってますね。やっていけるのか(建設会社の佐々木孝雄社長)

・設備を復旧させ企業の再建を促したグループ補助金、経営を軌道に乗せるためにどう需要を掘り起こしていくのか模索が続いている。

<新たな市場の開拓を目指す企業を支援する「ハンズオン支援事業」とは>
・5兆円の産業・雇用を支える予算、この中には設備ではなく人や技術への支援を重視した予算もある。その一つハンズオン支援事業、新たな市場の開拓を目指す企業を支援する予算だ。
・震災発生の翌年、地元・気仙沼市で水産加工品の企画・販売会社を立ち上げた岩手佳代子社長、従来の水産加工品を独自にブランド化して販売する企画が認められ、補助金が認められた。

気仙沼は本当に素材に恵まれていて、せっかくこんなに美味しいものを代々作ってきたのに、ここで終わらせてしまうのかなというさみしさと、どうにかならないか(岩手さん)

・岩手さんが活用したハンズオン支援事業、会社を興した人が市場調査や経理など専門知識を持つ人から支援を受けられる仕組み。設備に補助金を出すのではなく、支援する専門家に予算を配分する。水産加工業に新規参入した岩手さんは、どのような客層を狙った商品を開発すべきか専門家に相談した。

ターゲットなんて絞らなくてもいいじゃない、美味しいものは美味しいんだからと思っていた。でも“多く広めるためには(ターゲットを)絞って、どんぴしゃで持っていかないと横の広がりはありませんよ”とか(同上)

・半年間、専門家のアドバイスを受けて生まれた蒲鉾、若い女性が手に取りやすい大きさとデザインにした。岩手さんから商品の製造を依頼された水産加工会社も販路拡大に期待を寄せている。

最初は小さいサイズだということで面倒くさいなと思ったんですが、新しい顧客を獲得するためにはこれもいいのかなと。これから気仙沼市は人口が減るので、そういう意味では首都圏、都会に少しずつでも広めてもらうのは有り難い(水産加工会社の尾形啓一社長)

<震災をきっかけに新たな事業に挑戦する人が現れている>
・被災地の産業には今、変化の兆しがみえ始めている。先月、仙台市で復興予算を受けている企業など360の団体が集まり交流会を開いた。岩手・宮城・福島の3県では新設された法人の数が1.5倍(平成22年・26年比較)に増えている。震災をきっかけに新たな事業に挑戦する人が現れている。

被災地に仕事を通じて新しいコミュニティを作る。女性にとって魅力的な就労の場を作ることを目指して事業に取り組んでいます(女性)

・復興予算で将来地域を支えていく企業をどう育てていくか、その効果が注目されている。

産業の再生のため過去に例のない様々な資金が投じられた今回の復興予算、復興構想会議の中心メンバーとして国の政策づくりにも加わった飯尾潤氏、産業の振興を図ろうとした今回の予算の効果をどう評価しているのか聞いた(鎌田キャスター)

緊急事態で思い切ってやってみたが、何が効果があるのかよく分からない中で、しかし分からないから(国費を)出さないとそのままになってしまうから、思い切って出してみた。初めて分かったことだが、お金だけでは復興を進めるのは難しいことに気づいた。ハード事業は5年間がヤマ場だった。ただこれからあと5年間はソフトがヤマ場になってくる。本当に産業ができるかどうか、これからだ。新しい町が出来てきて人々が暮らしていけるようにしないと、せっかく町が出来ても暮らしていけなくなってしまう(飯尾氏)

企業に公の資金を投入するという思い切った対策は、震災で失った設備を再建し事業の再開にこぎ着けるところまでは効果があったと思う。しかしその後、業績が回復するかどうかは企業や業種によって差が大きく広がっている。これまでの対策の効果はまだ検証する必要があるが、今回注目したいのは設備に資金を投入するのではなく、事業を支える人やノウハウを支援する仕組みが一定の効果をあげていたということだ。ここにこれから被災地に求められる産業振興のヒントがあるように感じた(鎌田キャスター)


<NPOの支援の現状は>
被災した一人ひとりの生活をこれからも支えていくために何が必要なのかみていく。今回の予算で特徴的だったのは、NPOなどの民間団体への資金の投入が初めて本格的に行われたことだ。予算全体の中では金額は決して大きくはないが、被災者の生活を継続して支えていくために欠かせないものであることが分かってきた(鎌田キャスター)

・被災者支援の予算の中にNPOが活用できる資金がある。高齢者や子どもたちなど様々な被災者を支える13事業、合わせて592億円。
・宮城県石巻市で活動するNPO、仮設住宅などに住む高齢者を病院に送迎するサービスを行っている。利用者の負担は2kmで100円、今年度復興予算453万円を受けている。行政の手がなかなか行き届かない分野で、NPOが被災者を支援している。

神様みたい(利用者)
ありがたい、本当に手を合わせよう(と思う)。こういうサービスがなければ生きていけない(利用者)


・国がNPOの活用に予算を投入した背景には阪神・淡路大震災など過去の災害の教訓がある。数多くの民間団体が被災者の支援にあたったが、資金不足で活動を続けられなくなる団体もあった。このため国は今回の復興の基本方針でNPOなどの活用を柱の一つに位置づけ、資金を投入することにしたのだ。被災地で活動するNPO、この5年間で796が新たに設立された。
・被災地の将来を担う子どもたちの支援にも予算が使われている。あるNPOは南三陸町の中学校で放課後、学習支援にあたっている。この中学校には自宅が被災した生徒も数多く通っている。環境が変化する中で学校は学力の低下を懸念していた。
・3年生の渡辺柊真くん、受験を前に学習支援を受けている。彼は仮設住宅に両親と兄弟の家族7人で住んでいる。悩みは勉強に集中できないことだ。

机は3人で使ってて、こっちが自分、真ん中が弟、一番端が兄(渡辺くん)

・机に向かうと決まって妹たちがやって来る。

集中できない(同上)

・渡辺くんにとってNPOの学習支援が貴重な時間になっている。

分かんないとこをを聞いたりとか、集中して勉強できるのでありがたいと思います(同上)

・被災地で子どもの支援を続けてきたNPO、しかしその活動は今厳しい状況にある。今年度受けていた補助金は440万円、NPOの育成を目的とした事業だった。この事業が今年度で廃止されることになったのだ。震災発生から5年を経て新年度は補助金の対象となる活動が見直される。
・NHKはこのNPOと同じ補助金を受けていた団体にアンケート調査を行った。87%が活動を続ける上での課題を資金の不足と答えた。学習支援を続けるNPOも新年度、補助金が認められるかはまだ分からない。

ニーズはあるので出来るだけやらなくてはと思っているが、常にお金をどこから手当てするのか考えながらの自転車操業なので、そこは本当にもうちょっと長いスパンで見られたらなと思います(キッズドアの渡辺由美子理事長)

・渡辺くんは先月受験した高校の合格発表の日を迎えた。無事に合格することが出来た。

高校を卒業したら就職したいと思っているので、勉強を頑張りたいと思います。人の役に立てることをしたいと思います(渡辺くん)

<この5年間の取り組みの教訓は>
国民の負担によって生み出された26兆円の復興予算、インフラ整備や町づくり、産業の振興、被災者の支援、検証を進めると想定を超える人口減少や高齢化が復興をより難しくしている現状がみえてきた。この5年間、復興に向き合ってきた当事者たちはどんな教訓を得たのか、国と自治体の責任者に聞いた。
壊滅した町で復興の先頭に立ってきた南三陸町の佐藤仁町長、全国各地で自らの経験を語っている。伝えているのは、被災地の経験を今後に生かしてほしいという思い(鎌田キャスター)


思いを持って町を離れた方がいっぱいいるので、そういう方々の思いを私もずっと受け止めてきた。町を離れるつらさ、さみしさ、悲しさを常に町を離れるときに言われたので、災害は本当に厳しい残酷なものだと改めて身にしみて感じている。人口減少になったとき、最低限この町としてインフラがどういうものが必要で、どれくらい縮小できるのか、どれだけ集約できるのか考えることが、これからの災害復旧で非常に大事になると思う。それを事前にやっておくことでスピード感、復旧、財源の問題、様々な問題が少しは軽減されていく、そこも大事だと思う(佐藤町長)

復興庁の岡本全勝事務次官、震災の発生以来一貫して国の復興政策の実務を取り仕切ってきた。5年が経った今、復興のあり方そのものを広く議論すべき時期にきていると話している(鎌田キャスター)

26兆円、5年で使ったが、想定していた通りの部分と想定していなかった部分がある。一つは高台移転、正直申し上げて高台移転は時間とお金がかかっている。元の地で生活が再建できるように安全な工事をして住宅を再建するというのが、あのときの国論、国の方針だった。ただ今後、東海・東南海(南海トラフ)という大きな地震・津波が起きるときに、今回のようなやり方がいいのか、他の方法があるのか、これは議論してみてもいいと思う(岡本事務次官)

(被災地の復興のあり方・現実から何を教訓にすべきか)
今回の津波が町全体を流してしまったような地区、こういうのは初めてですが、分かったのはインフラだけでは町は復旧しない。働く場所、コミュニティー、商業サービス、こういうものがあって初めて町が出来るというのは我々再認識、勉強させられた。ただインフラ復旧、産業、コミュニティー、費用対効果どれだけの予算が適切かなかなか難しい。行政ができること、企業にお願いしたいこと、そしてNPOやボランティア、町内会にお願いしたいこと、この3つをどう組み合わせていくか、これからの日本を作っていく道だと思う(同上)

震災発生から5年、国は総力をあげて被災地の復興に取り組むとして26兆円もの巨額の費用を投入してきた。さらにこれからの5年間、被災地の自立に繋げる予算として6兆5千億円を投じる方針だ。その財源として増税はこの先も20年余り続く。二度と同じ悲劇を繰り返さないという国民全体の願いからスタートした被災地の復興、取材からみえてきたのは環境やニーズの変化に応じて柔軟に予算を使い、ときには見直すことが重要だということだ。そして災害からの復興は起きてから考えるのは難しく、予めどのような町に再生するのか想定しておくことの大切さも分かってきた。
このことは被災地だけの問題ではない。この5年間で急速に人口減少や高齢化が進んだ被災地は、日本全体の20年後の姿を表しているとも言われている。被災地がどのように課題を克服し、再生を果たしていくのか。被災地の復興を考えていくことは日本の将来を考えていくことに他ならない(鎌田キャスター)


(2016/3/15視聴・2016/3/15記)

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【明日へ―支えあおう―】復興サポート・子どもたちで祭りを創ろう~宮城・岩沼市 Part4
【明日へ―支えあおう―】ボクらの夢は、終わらない ~福島・南相馬に集う若者たち~
【明日へ―支えあおう―】あったかい“まち”をつくりたい~宮城・石巻市~
【明日へ―支えあおう―】証言記録 東日本大震災 第40回“いのちの情報を届けろ”広報臨時号~岩手

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